建築設備のライフラインともいえる配管。株式会社ベンカンは、その配管継手の製造・販売を中心に事業展開をおこなう企業だ。
1947年に前身の日本弁管工業株式会社から創業し、70年以上の歴史を持つ。特に「メカニカルジョイント」の分野ではグローバルに知られる。
同社はシャノンを導入し、マーケティングに力を入れだした。
「東南アジアでベンカンといえば溶接やジョイントの会社として知られています。メカニカルジョイントは40年来の製品ですがまだまだ成長しており、むしろこれからの製品ともいえます」 と語るのは代表取締役社長の我妻武彦さん。
ベンカンのマーケティング業務を立ち上げた我妻さんは仙台で建築業界の営業から始め、新規企業の開拓に務めてきた。 営業畑から経営企画、管理部長も歴任。
「お客様を1件ずつ訪問するという泥臭い営業スタイルを30年以上続けてきました」という。
ベンカンの本社は群馬県にあるが、営業部隊の執行本部は東京・大森。その2つの拠点をベースに全国を歩いた。
「人に会う」という基本を重視しながらも、我妻さんは一方で、従来型の営業の方法だけでは売上は伸びないのではないかという危機感から、マーケティングの必要性を感じ始めていた。
我妻さんが関心を持った当初は、日本ではマーケティングの情報はBtoCが中心だったが、次第にBtoBの情報も得られるようになり、関連する書籍を読み、セミナーを受講したという。
そうした中で、デジタルを用いた施策や「マーケティングオートメーション(MA)」などのツールの活用、「デマンドジェネレーション」などの考え方に刺激を受けた。
当初は賛同者はあまり多くなかったものの、社内でマーケティングの必要性を説得し、シャノンのMAツール「SHANON MARKETING PLATFORM」(SMP)の導入を決意したのが2016年。
しかし、この時期の導入は1年間にとどまった。その理由は何だったのだろうか?
「作業優先で製品を導入したことが問題でしたね」と我妻さんはいう。 シャノンは製品としては使いやすかったが、社内での運用が根づかなかった。
「必要なのはオペレーターではなく、マーケターだったのです」と我妻さん。 2017年には、「このまま運用が進まないまま利用を続けるよりも、いったんMAはやめよう」とSMPの運用を中止する。
現在、シャノンを活用しマーケティングに取り組んでいる営業部 開発営業課 マーケティンググループの佐藤康之氏も、この時は営業の立場。
「正直なところ、横から見ていても何をしているかあまり見えてこなかったですね」という。
当時は、営業の中で見込み顧客のリードを育てるという考え方はあまり浸透しておらず、カタログを送付して電話をかけるということが新規営業の基本。 「ツールを入れても意味がないのでは?」という受け止められ方だった。
我妻さん自身も営業の経験から、こうした営業現場の思いは理解できたという。