「3C分析」はマーケティングのフレームワークのひとつとしてよく知られています。
複数あるフレームワークのなかでも、戦略策定の初期段階で使用されることが多いです。
3C分析は40年以上前、元マッキンゼー日本支社長で経営コンサルタントの大前研一氏が1982年に英語で著した『The Mind of the Strategist』のなかで、はじめて提唱されました。
同書では、The Strategic Triangle (戦略的トライアングル)として、「Customer」「Competitor」「Corporate」の3つを挙げ、それぞれのカテゴリにおける戦略を明らかにしています。
今回はこの3C分析について、目的や分析の順番、他の分析方法との併用のしかたなどを解説していきます。
マーケティングの分析手法、3C分析とは
代表的なマーケティング手法のひとつである3C分析について、基本を確認します。
3C分析とはなにか
「3C」とは、Customer、 Competitor、Companyの3つです。
- 顧客(Customer)…顧客が求めているもの、マーケットの規模や成長性など
- 競合(Competitor)…競合他社の強さ、参入の容易さなど
- 自社(Company)…自社の資金・生産能力・人材・ブランド力などのリソース
Customer(顧客、市場)
Customerには「顧客」のほか「市場」の意味もあります。
顧客はどこにどれくらいいるのか、参入可能な市場の規模や成長性などを分析します。
ひとりの顧客がどんな行動をとるかに焦点を当ててミクロ的に分析することもあります。
Competitor(競合)
Competitorは競合相手です。
競合する企業の数、シェアがどれくらいか、競合する商品の特徴や価格などの環境を分析します。
Company(自社)
Companyは自社です。
自社の強みと弱み、自社の商品の売上やシェア、保有するリソース(人、モノ、資金、技術)などについて分析します。
3C分析は、以上のように3つのCそれぞれを詳細に分析することにより、事業の全体について抜け・漏れなくチェックができ、有効な戦略を導き出せるという考え方です。
3C分析にCo-Operator(協力者)を加えたものを4Cといい、4C分析という方法もあります。
さらに、Community(地域)を加えて5C分析とすることもあります。
3C分析の目的
3C分析の目的は、KFS(Key Factor for Success)を見つけることです。
KFSは重要成功要因と訳され、他より優位が認められる要素のことです。KFSはKSF(Key Success Factor、重要成功要因)と表されることもあり、CSF(Critical Success Factor、主要成功要因)とも同義です。
KFSは具体的には、「価格の安さ」「多くの顧客に商品を届けられる販売網」などのように絞り込まれます。
こうしたシンプルなKFSを正しく導き出すために、企業は経営判断ができるレベルであらゆる角度から3Cを分析する必要があります。
たとえば、自動車部品の会社が製造部門だけで3C分析を行った場合には「どの技術を推進するか」「価格はどこまで下げられるか」といった議論が可能ですが、部門外から人やお金を持ってくる議論ができません。
「新規採用で製造部門の人員を強化する」「設備投資を行う」といった戦略を決定するためには経営部門が総合的に判断する必要があります。
また、自社だけでなく競合する他社も3C分析を行って次の戦略を実践しているので、定期的に3C分析を繰り返して戦略をブラッシュアップしていくことも欠かせません。
3C分析の順番
3C分析には順番があります。それは Customer → Competitor → Company という順です。
理由として、以下が挙げられます。
CustomerとCompetitorは外部環境、Companyは内部環境
Customer(市場・顧客)とCompetitor(競合)の2つは自社でコントロールできない外部環境で、Company(自社)はコントロール可能な内部環境です。
与えられた市場環境をまず理解して、その後、それに対応できる自社の戦略を分析するという流れになります。
顧客の視点に立つことが最も重要
最も重要なことから分析していくとこの順番になります。顧客が何を求めているかをよく知ることが3C分析成功のカギとなります。
たとえば「第三のビール」は低価格を理由に売れました。一方、スマートフォンはガラケーよりも魅力があったのでより高価でも売れました。
どちらも顧客のニーズに的確に応えたからヒットしたといえます。
3C分析のメリットとデメリット
3C分析のメリットは以下です。
シンプルでわかりやすい
3つのCという枠組がシンプルでわかりやすく、企業内外で合意形成するのに役立ちます。
抜け・漏れがない
3つのCという枠組みだけですが、抜け・漏れなく必要な項目をチェックでき、KFSを導き出すために役立ちます。
優先順位が明確
3C分析では検討の順番が決まっているので、優先順位を誤ることなく分析を進めることができます。
一方、デメリットとして以下が挙げられます。
Competitorの情報収集が難しい場合がある
競合他社の情報は一般的な企業データベースから得られるもののみで、それ以外の新商品開発や顧客情報などを入手することは困難です。
大きな市場を対象とする3C分析では検討に十分な情報が得られないこともあります。
分析に時間がかかってしまうことがある
戦略の決定と実践にはスピードが要求されるのに、競争の激しい市場などを分析するときには時間がかかってしまうこともあります。
最終判断に主観が入る可能性がある
Companyの分析やKSFを決定する段階で主観が入る可能性があります。これを避けるために第三者に分析をする方法もあります。
3C分析は有効なフレームワークですが、デメリットの部分を補うために他の分析手法を併用することもよく行われます。どんな手法を使うかについてはこのあと述べていきます。
3C分析の具体的な手順
次に、3つのCそれぞれの分析について解説していきます。
Customer(顧客、市場)の分析
Customerには「顧客」と「市場」の2つがありますが、まず顧客の分析から紹介します。
顧客を知るための方法の代表例が「セグメンテーション」です 。
セグメンテーションとは、顧客を細分化して、自社の商品やサービスのターゲットとなるセグメント=顧客グループがどこにあるのかを明らかにすることです。
また、現状では自社の顧客グループではないが今後のアプローチの対象となる顧客グループを見つけて、その顧客ニーズに合わせた商品を開発することもあります。
具体的には、顧客を年齢、性別、居住地、年収、ライフスタイルなどでグループ分けしていきます。
セグメンテーションとセグメントについては以下の記事でくわしく紹介しています。
参考:セグメントとは?意味や目的、分類方法、シャノンの事例「セグメントメール」も解説!
セグメンテーションに始まる商品開発の手順を手法化したのが、コトラーが提唱したSTP分析です。
参考:「STP」「AIDMA」など、知っておきたいマーケティング分析手法や考え方を一挙に紹介
ほかに、顧客分析の方法としてアンケートやクラスタリングがあります。これらの手法については以下を参照してください。
参考:
マーケティングにおけるアンケートの効果的な作成と活用の方法は?
クラスタリングの手法をスコアリングに活用したら、「先読み力」がアップ
顧客は常に変化するということも重視すべき点です。変化のポイントとして、顧客構成、顧客行動、顧客志向などがあります。顧客の変化をいち早くとらえて商品やサービスに反映させることで新しい市場を先におさえることができればその後も有効です。
次に市場の分析です。マクロ分析としての「PEST分析」、ミクロ分析としての「5フォース分析」が代表的です。
PEST分析では外部環境を以下の4つに分類してそれぞれ分析します。
- 政治(Politics)…消費税率、規制の強化・緩和など
- 経済(Economy)…景気動向、市場の成長、金利など
- 社会(Society)…少子高齢化、ライフスタイルの変化、流行など
- 技術(Technology)…最新の技術動向など
5フォース分析では、以下を分析します。
- 競合他社…現在の競合他社との競争の激しさ
- 買い手の交渉力…BtoCなら消費者、BtoBなら顧客企業との力関係
- 売り手の交渉力…原材料を供給する企業との力関係
- 代替品の脅威…他の品やサービスに代替えされる可能性
- 新規参入の脅威…今後競合企業が参入する可能性
ほかにも市場分析には多様なフレームワークがあります。以下の記事で解説しているので参照してください。
参考:市場分析の手法にはどんなものがある?種類や活用法を知っておこう
Competitor(競合)の分析
Competitor(競合)の分析にあたっては、自社にとって競合にあたる企業を対象として分析をします。
競合企業の現状を知る
競合企業の現在の売上、市場シェア、成長率、広告戦略、商品の特徴などの基本的な情報は有料/無料のデータベースサービスから取得できます。
情報を集めて、まず競合企業の現状を正確に理解します。
競合企業の強み・弱みを特定する
競合が自社よりもシェア上位や同程度であるならばその理由を解明していき、自社にはない競合の強みを特定します。
あれば弱みも、明らかにしていきます。
競合企業分析のためにアンケート調査、インタビュー調査などを行うこともあります。
すでに顧客と市場の分析を終えているので顧客のニーズがどんなものかがわかっていますが、それに対して競合企業がどこまで的確に応えているのかを見ていくことがポイントです。
Company(自社)
最後に行う自社の分析では、KFSを特定することが目的です。
Customer、Competitorの分析を終えて、「顧客は何を望んでいるのか」「市場の成長見込みはどの程度か」、「競合他社は顧客ニーズにどこまで応えられているか、いないか」などが明らかになっています。
競合する市場において、Competitorの弱みの部分に対して自社が優位となるような強みを持っていれば、それはKFSの有力候補となります。
また、Competitorがニーズに応えきれていない顧客セグメントをターゲットとして新たな事業展開をはかることも選択肢となります。
自社の分析では内部環境を整理するVRIO分析、内部環境と外部環境を比較しながら分析するSWOT分析などを用いることもあります。
VRIO分析では自社の経営資源を以下の4点から評価します。
- Value(価値)
- Rarity(稀少性)
- Imitability(模倣可能性)
- Organization(組織)
SWOT分析では、内部環境としてのStrength(強み)とWeakness(弱み)、外部環境の機会(Opportunity)と脅威(Threat)を対比させながら分析します。
これらの過程を経て、競合より優位に事業を展開できるKFSは何かを明らかにします。
3C分析はどんなときに使う? 他の分析手法との組み合わせ、シャノンの具体例を交えて紹介!
実際の現場で3C分析を有効活用するときに他の分析手法と併用する事例、シャノンの活用事例についてご紹介します。
シャノンでは3C分析とPEST分析を実施
シャノンでは自社の中長期的な戦略立案に関連して、自社の3C分析とPEST分析を同時に行いました。
以下はその一部を抜粋したものです。
PEST分析を同時に行うことで外部環境をくわしく分析して、そのなかでシャノンの立ち位置がより明確になります。実際にはこの他にも工程を経るのですが、一連の分析によりKSFを明らかにしていきました。
まとめ
本稿のポイントは以下の3点です。
- 3C分析とは、Customer(顧客、市場)、Competitor(競合)、Company(自社)に分けて分析をするマーケティングのフレームワークです。
- 3C分析の目的は、KFSを特定することです。
- PEST分析、SWOT分析など他の分析手法と併用することにより3C分析を補強することもよく行われます。
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