近年BtoBビジネスでも欠かせないマーケティング手法となりつつある動画マーケティング。今回はそのなかでも注目の「バンパー広告」についてとりあげます。バンパー広告のしくみ、特徴、活用方法などについてご紹介していきます。
拡大する動画マーケティングとバンパー広告の位置づけ
簡単に動画マーケティングの全体像を確認し、バンパー広告についても解説していきます。
動画広告市場は今後急拡大の見込み
2021年、サイバーエージェントの調査によると、動画広告市場は成長を続けていて、2022年から3年後の2025年までに市場規模は倍増に近い1兆円超まで拡大すると予測されています。
インターネット広告のなかで、テキストや画像よりも情報量が多く豊かな表現ができる動画へのシフトが明らかです。BtoCビジネスが先行しているとはいえ、BtoBにおいても有力かつ欠かせない施策になると考えられます。
バンパー広告は、動画マーケティングの多様な選択肢のひとつ
動画マーケティングはまず大きく2つに分けられます。
ひとつは制作した動画をYouTubeなどから無料で配信する方法、もうひとつは有料の動画広告として配信する方法です。
また、配信可能なプラットフォームとしてはYouTubeが代表的ですが、ほかにSNS動画広告などの選択肢もあります。
大まかにまとめたのが以下です。
動画マーケティング施策の種類 | ||||
どこから配信 | YouTube | SNS | そのほかのWebメディア | オフライン |
無料で配信 | ・企業公式チャンネル | ・各種SNSの企業アカウントで配信 | ・自社サイトから配信 | ・イベント、ウェビナー、展示会などで配信 |
有料で動画広告 | ・インストリーム広告 ・インフィード動画広告 ・マストヘッド広告 ・バンパー広告 |
・各種SNSで広告配信 | ・Webページに広告配信 ・スマホアプリへ配信 |
・TVCM ・タクシー広告 |
上記でわかるように、バンパー広告はYouTubeの動画広告メニューのひとつです。
企業が動画マーケティングを実施するときは、有料/無料の多種多様な配信方法のなかから戦略に合ういくつかの施策を選択し、合わせて自社の目的に合ったクリエイティブを制作して進めていきます。
くわしくは以下の記事で解説しています。
参考:動画マーケティングとは?会社で活用するための手法を紹介
YouTubeの動画広告メニュー
YouTubeには以下のような動画広告メニューがあります。
YouTubeの動画広告の種類 | |
スキップ可能なインストリーム広告 | YouTubeの動画再生の前後、および再生中に動画再生スペースに表示される。 再生後5秒経過するとスキップボタンが表示される |
スキップ不可のインストリーム広告 | 上記と同じインストリーム広告で、広告動画再生中のスキップができない。 動画の長さは15秒以下 |
インフィード動画広告 | YouTube検索結果のフィード、関連動画リストの上部、YouTubeモバイルのトップページなどに表示。 広告がクリックされたときのみ動画が再生される |
バンパー広告 | 動画の再生前、再生中、または再生後に6秒以内で再生される。 動画再生中はスキップ不可 |
マストヘッド広告 | YouTubeホームフィードの上部で最大30秒間音声なしで自動再生される。 表示させるコンテンツの自由度が高い |
アウトストリーム広告 | YouTube以外のモバイル端末内広告スペースに配信 |
多様な動画広告のなかでバンパー広告をどんな場合に活用するかについて、次に述べていきます。
バンパー広告で効果を上げるマーケティング
マーケティング戦略の中でバンパー広告をどう位置付けて活用していくかについて解説します。
バンパー広告の特徴とメリット・デメリット
バンパー広告は、「6秒動画」という短さと「スキップ不可」の2点が最大の特徴です。課金のしくみは表示される回数に対して課金される「インプレッション方式」で、1,000回配信されるごとに費用がかかります。
バンパー広告のメリットは以下です。
確実に内容を届けられる
バンパー広告の再生時、スキップボタンを待つ必要がないのでYouTube視聴者は動画を視聴するほうに意識が向きやすいです。
企業が伝えたいポイントがユーザーにとどきやすいしくみといえます。
視聴者がストレスを感じにくい
視聴したい動画の前後に入ってくる広告にユーザーは慣れているとはいえ、あまりに興味がない内容だったり長すぎたりすると広告主に対してネガティブな印象を持ってしまうことがあります。
しかしバンパー広告は短いので視聴者にストレスを与えないことがメリットです。
「Z世代では集中力の平均持続時間が8秒」ともいわれています。
ターゲットを絞り込んで動画配信できる
これはYouTubeの動画広告全般にいえるメリットですが、配信対象ユーザー(オーディエンス)を属性で絞り込んだり、広告を配信する動画カテゴリーを選んだりすることが可能です。
一方、バンパー広告のデメリットは以下です。
広告に入れられる情報が限定される
6秒の動画なので、当然情報量は限定されます。
広告戦略によってはバンパー広告が不向きな場合もあるでしょう。
効果測定がしづらい
バンパー広告はクリック数ではなく表示回数で課金されるため、正確な効果測定が難しいという点もデメリットとして挙げられます。
バンパー広告で効果を上げるためのポイント
バンパー広告は6秒と短いので、用途やクリエイティブがある程度限定されます。以下のようなポイントをおさえましょう。
届けたいメッセージを絞り込む
6秒の動画1本で伝えたいことを1つに絞り込みます。6秒動画は見ているあいだにクリックなどのアクションができません。
したがって視聴者に期待することは、バンパー広告の内容を記憶してくれること、さらに時間が経ってからアクションを起こしてくれること。
そのためにメッセージを1つに絞ります。
ブランディングに適している
バンパー広告は詳しい説明ができないので、まだ認知されていない商品や説明が必要な商品には向いていません。
一方で、会社名や商品名を覚えてもらうことができるので、ブランディングに適しています。
クリエイティブはインパクトを重視
広告を視聴者の記憶に残すために、インパクトが大切です。
内容はシンプルにして、企業名や商品名などを最後の2秒で明確に伝えます。
「面白い」「驚く」要素も有効です。
クリエイティブを複数セット用意することも効果的
6秒動画一本で伝えきれない内容は、複数の動画を用意することでより伝わりやすくなります。
複数回視聴したときにユーザーの興味を持続させ、より記憶に残る効果も期待できます。
ただし、このあとバンパー広告の事例を紹介しますが、それらを見ると必ずしも「メッセージは1つだけ」「インパクトのある動画」とは限らないようにも感じられます。基本のセオリーはあるものの、広告表現の可能性はそれにとどまらないのかもしれません。
バンパー広告のKPI設定
動画広告では「視聴完了率」「クリック数」「クリック率」などを指標とすることが多いですが、スキップもクリックもないバンパー広告ではこれらを測定できません。
バンパー広告の場合は視聴後の「行動」を測定します。KPIとしては以下のような数値が使われます。
- 指名検索数
- LPへの新規ユーザー流入数、コンバージョン数
- ディスプレイ広告のクリック率
- 商品の売上
ほかに、外部のリサーチ会社に依頼してブランド認知度調査を実施する方法もあります。
バンパー広告の具体例とシャノンの取り組み
BtoC、BtoBのバンパー広告の事例とシャノンのバンパー広告についてご紹介します。
BtoC、BtoBそれぞれのバンパー広告の事例
まずBtoCのバンパー広告として以下があります。6秒のコンテンツとはいえ、バリエーションが豊富なことがわかります。
ロート製薬のこちらのバンパー広告は、7パターンあるそうです。
Adidasのバンパー広告は、広告であることを感じさせない演出です。
BtoCほど多くはないですが、BtoBのバンパー広告も増えつつあります。
以下はクラウドサービス提供企業の動画です。
SurveyMonkeyのバンパー広告は「サービス内容列挙→無料でお試し」とかなりの情報量をまとめて見せています。
アイ・クリエイトは「バンパー広告を3万円で作りますよ」というバンパー広告を実施しています。
シャノンのバンパー広告への取り組み
2022年4月1日より、シャノンは3年ぶりにバンパー広告を実施しました。冒頭で紹介した4本です。
オフィスでシュールなやり取りが繰り広げられる『サラリーマン山崎シゲル』のキャラクターを起用できればと思い、著者の田中光さんにご協力いただきました。
参考:『サラリーマン山崎シゲル』バンパー広告公開時のプレスリリース
マーケティング部門の「あるある」なシーンを切り取った4パターンの動画により、課題を解決するツールとしてのシャノンマーケティングプラットフォームを認知し、興味を持ってもらおうという狙いです。
シャノンは2020年秋にもバンパー広告を実施しています。以下の記事でも紹介しています。
参考:現代マーケティングにおける広告戦略とは。BtoBではどう進める?
このとき、ブランドワード「シャノン」の検索数が前年比145.4%増加するという成果が得られました。
今回は過去の施策と2022年の施策を比較・検証することが可能です。経験を重ね、シャノンの「勝ちパターン動画」を早く見つけていこうと思います。
BtoBではほかに「タクシー広告」「SNS動画広告」も有望
YouTubeは世界中のユーザーが見るメディアなので、動画広告のなかでYouTube動画が有力な選択肢であることは間違いありませんが、ほかにも選択肢があります。BtoBにおすすめの動画広告として、以下があります。
タクシー広告
BtoBに効果があると注目されているのがタクシー動画広告です。
タクシーの運転席・助手席の後部に設置されたタブレットから動画を配信します。
タクシー乗車中という時間と空間のなかで広告が視聴される確率が高く、乗車する男性の4割が経営者やマーケティング関連職というのも魅力です。
参考:テレビCMより効果的な広告?タクシー搭載型デジタル・サイネージ『Tokyo Prime 』
SNSの動画広告(Twitter、Facebook)
SNSのなかでもBtoBと親和性が高いとされているTwitterやFacebookに配信する動画広告も有効です。
Facebookは実名登録のため精度の高いターゲティングが可能です。
TVCM
TVCMを実施するBtoB企業が増えています。
TVCMのメリットは、幅広く多くの人に告知ができること、ブランティング効果が高いことなど。
企業が成長を続けて大企業との取引を拡大したいフェーズに入ったときの実施例が多いようです。
TVCMは他の動画広告と比較してかなり費用がかかります。
まず地域を限定したタクシー広告で動画広告の経験を積み、次にエリアを限定したTVCM、最後に全国放送のTVCMというように段階を踏んで進めていくことが一般的です。
まとめ
本稿のポイントは以下の4点です。
1. 動画広告は有力な集客手段で、そのなかでもYouTubeのバンパー広告がBtoBマーケティングで注目されています。
2. バンパー広告の特徴は、「6秒という短さ」「スキップ不可」の2点です。
3. バンパー広告はメッセージを絞り込んで発信する企業や商品のブランディングに適しています。
4. シャノンでも2022年4月よりバンパー広告を配信。今後も動画マーケティングに取り組んでいきます。
最後に、シャノンのマーケティングオートメーションでは、データの一元管理による効率的なリード獲得とナーチャリングが可能です。
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