企業のマーケティング・営業活動にとって重要なハウスリスト。
ハウスリストの質と量を高めることが、売上拡大のために欠かせません。
そして、ハウスリストを補うため、白地リストなどと呼ばれる外部のリストの活用もときには必要です。
今回は、ハウスリストの定義や重要性などの基本的なことから、白地リストを含むリストの種類、ハウスリスト管理のためのツール、リストの作成方法などを順に解説していきます。
ハウスリストとは
ハウスリストとは何か、なぜ重要なのかを確認し、ハウスリストの収集方法を解説します。
ハウスリストとは
ハウスリストとは、自社がなんらかの接点をもったことがある、すべての顧客や見込み客のリストです。
ハウスリストには現在の顧客、過去に取引があった顧客、まだ取引したことがない見込み客(リード)が含まれます。
ハウスリスト作成のメリット
近年、ハウスリストの重要性は増しています。ハウスリストのメリットとして以下が挙げられます。
One to One マーケティングが可能
One to Oneマーケティングとは、顧客を理解し、一人一人に合わせてアプローチすることです。自社で収集したハウスリストの場合、会社名や名前などの基本情報のほかに情報を入手した日時・経路、見込み客の興味・関心事などの情報もデータ化されていることが多く、それを起点としてOne to Oneマーケティングを実施、継続していくことができます。
参考:One to Oneマーケティングとは?MAで効率化できる具体的手法を解説
費用対効果があがる
新規に顧客を獲得するには広告費など多額の費用がかかり、施策も頭打ちになるケースがあります。
ハウスリストを活用してリードナーチャリング、アップセル・クロスセル、休眠顧客の掘り起こしをすることにより、CAC(新規顧客獲得コスト)を抑えながら商談創出の機会を増やすことができ、結果的に費用対効果改善につながります。
参考:LTVとは?BtoBマーケティングにおけるLTVの重要性、施策、成功事例を解説!
CAC(顧客獲得単価)とは?LTVとの関係・改善方法・計算用テンプレートを紹介!
リードの獲得方法
企業はさまざまな方法でリードを獲得します。主な方法として、以下があります。
営業部門の名刺交換
一般の営業活動や展示会などのイベントで営業部門が獲得した名刺はデータ化してリードリストに追加します。
セミナー、ウェビナーなどのイベント申込
企業が開催するセミナー、ウェビナーなどのイベントも重要な集客施策です。セミナーやウェビナーで実施するアンケートの回答内容もリストに追加されます。
資料ダウンロード、メルマガ登録
Webサイトから資料をダウンロードするときやメルマガ登録するときに入力する情報です。どんな資料をダウンロードしたかもリストに追加されます。
問い合わせフォーム
Webサイトのお問い合わせフォームから入力された情報です。お問い合わせ内容もデータ化します。
SNS
ダイレクトメッセージ、キャンペーンなどSNS上でのコミュニケーションを通じて得られた情報です。
会員登録
オンラインストア、オンラインコミュニティなどを利用するために登録した会員情報です。
ハウスリストの活用方法
ハウスリストの活用方法として、以下があります。
リードナーチャリング
ハウスリストの中には、購買意欲が高くすぐに商談化に進むリードもいますがそれはわずかです。
特にBtoB企業であれば、購買意欲が低いリードの興味・関心を引き上げていく「リードナーチャリング」は必ず行うべき重要な施策です。
リードナーチャリングには以下のような施策が有効です。
- メールマーケティング
- ウェビナー/セミナー
- ホワイトペーパー
- インサイドセールス
- DM
施策について、以下の記事でくわしく解説しています。
参考:リードナーチャリングとは?成果を出す7つの手法や成功事例を紹介
休眠顧客の掘り起こし
ハウスリストの中には、しばらくレスポンスがない「休眠顧客」がいます。
休眠顧客のなかには状況が変わり、購買意欲が高くなっている人もいます。
抽出した休眠顧客を対象に、メールやDMなどでパーソナライズされたアプローチを行うことを、「休眠顧客の掘り起こし」といいます。
幅広くリードを収集し適切に管理しているハウスリストがあれば、休眠顧客の掘り起こしは費用対効果が高い有力な施策です。
参考:休眠顧客の掘り起こしはなぜ必要?おすすめのアプローチ方法を紹介!
アップセル・クロスセル
ハウスリストの中には現在取引があるお客様もいます。既存顧客を対象とするマーケティング・営業活動では、「アップセル」「クロスセル」を促進します。取引履歴だけでなく既存顧客の興味・関心度がわかるデータを蓄積していれば、適切なアップセル・クロスセルをおすすめでき、売上アップと同時に顧客満足度を高められます。
新規事業、新商品の紹介
新規事業や新商品をスタートさせるとき、自社のハウスリストに対してメールやDMで案内をすることもあります。自社固有の顧客データであるハウスリストは、実績ゼロから始める新規事業や新商品のチームにとっても価値あるリストです。
顧客分析、ペルソナ作成
長期にわたり蓄積されてきた顧客データであるハウスリストは、RFM分析、セグメンテーション分析などの顧客分析にも活用されます。分析の結果は自社のマーケティング・営業戦略立案や新商品開発に役立ちます。マーケティング活動に欠かせないペルソナの作成にもハウスリストが役立ちます。
参考:顧客分析とは?7つの手法や進め方、成功事例を紹介
コラム記事:生成AI(ChatGPT)でペルソナを作成する具体的なプロンプトをご紹介
白地リストとは?ハウスリストとの違いや活用方法
ハウスリストの活用が重要であることを述べてきましたが、ハウスリスト以外のリストを活用する場合もあります。それが「白地リスト」です。
ハウスリストと白地リスト
ハウスリストが自社と接点があった顧客・見込み客であるのに対して、白地リストとは、今まで自社と接点がない見込み客のリストのことです。白地とは英語のBlank、つまり会社名や電話番号以外は空欄という意味です。
白地リストを入手する方法は、主に以下の2つです。
Webサイトなどから収集する
会社名、住所、電話番号などの企業情報はインターネット上で収集できます。自社がターゲットとする企業の公式Webサイト、iタウンページ、求人情報などを調べてリストアップすることで白地リストを作成できます。
企業情報提供会社から購入する
調査会社、マーケティング支援会社などが企業情報を提供しています。このような企業から有料で白地リストを購入する方法があります。ターゲットや条件に合う企業のリストを効率よく入手でき、担当者の役職や名前などの提供が受けられる場合もあります。
ハウスリストと白地リストのちがい
ハウスリストと白地リストのちがいを以下にまとめます。
ハウスリスト | 白地リスト | |
---|---|---|
定義 | 自社と接点があった顧客、見込み客 | 自社とまだ接点がない企業 |
データの収集方法 | マーケティング活動、営業活動により収集 | Webサイトの情報から収集 リスト提供企業から購入 |
データの特徴 | 担当者情報、接点履歴がある | 担当者情報がない場合が多い |
CVR、商談化率 | 高い | 低い |
メリット | 担当者情報や履歴情報を活用してOne to Oneのアプローチができる | 必要なときにすぐ入手できる 自社が取引したい企業にアプローチできる |
デメリット | リスト収集に時間がかかる | リスト収集にコストがかかる 担当者名やメールアドレスの情報がないことが多い |
上記のように、ハウスリストは日頃のマーケティング活動と営業活動により少しずつ蓄積した企業固有のデータであり、リスト化すると同時に継続的に関係構築をはかっていきます。企業はまず、ハウスリストのデータを収集し、それをもとにしたマーケティング活動、営業活動を行っていくことが基本となります。
以下は、シャノンのマーケティング実績におけるハウスリストと白地リストのインサイドセールス応答率、商談化率の比較です。
ハウスリストは過去に自社と接点があったリードのリストであることが白地リストとの大きなちがいですが、それが応答率、商談化率にも反映されています。
しかし、ハウスリストだけで事業目標を達成できない場合は白地リストも活用していきます。
白地リストの活用方法
以下のような場合には白地リストを活用します。
ハウスリストが足りないときの補完
インサイドセールス部門や営業部門のアプローチする対象がハウスリストだけでは不足する場合、白地リストにもメール、紙のDM、架電などの施策をおこないます。ハウスリストより確率が低いものの、白地リストでも一定割合の返信、応答が得られます。これらはハウスリストに追加されるので、白地リストの活用がハウスリストの充実につながります。
新たなターゲット層の開拓
新たなターゲットグループとの取引を開拓するとき、白地リストを対象として集中的にアプローチ施策を行うことがあります。たとえば、自社サービスの主な顧客企業が中小企業だが、大企業との取引を開拓するためアプローチをする場合などが考えられます。
ハウスリストに必要な項目
ハウスリストに必要な項目を整理します。主な情報は、以下の4種類です。
- 企業情報
- 担当者情報
- 興味、関心度に関連する情報
- 過去の接点
それぞれについて解説していきます。
企業の基本情報
企業の基本情報として必要な基本の項目は以下の通りです。
- 企業名
- 住所
- 電話番号(代表電話または担当部署の電話番号)
- 担当部署名(経理部、マーケティング部など)
- メールアドレス(問い合わせ受付メールアドレス、問い合わせフォームなど)
- 公式WebサイトURL
この他に、以下のような項目も追加することがあります。
- 業種
- 事業内容
- 従業員数
- 売上
- 設立年
- 取引先情報
これらの情報はWebサイトで公開されていることが多いので、企業名が明らかになった時点でリストに追加することができます。
担当部署と担当者の情報
担当部署と担当者の情報として、以下があります。
- 担当部署
- 担当者役職
- 担当者名
- 担当者メールアドレス
- 担当者電話番号
- 決裁権の有無
担当者が複数いる場合、すべての担当者を登録します。
このほか、部署の予算や決済の流れなどについても情報があれば追加します。
興味・関心度に関連する情報
見込み客がどれくらい購買意欲をもっているか、どんな企業課題を解決したいと考えているか、などに関連する情報を蓄積します。
- メルマガ開封履歴
- 展示会・セミナー・ウェビナー申込、参加履歴
- 資料ダウンロード履歴
- Webサイト閲覧履歴
- インサイドセールスとの会話履歴
- 見込み客区分(購買意欲:ホット、ウォーム、コールドなど)
最後の「見込み客区分」は自社で今後の商談見込みを区分している場合の項目です。
過去の接点
過去にウェビナーの参加履歴がある、といった接点の内容も重要なデータです。また、取引実績がある顧客については以下のようなデータが追加されます。
- 取引履歴(取引内容、金額、頻度、総額など)
- 商談履歴
- 問い合わせ履歴(クレームや問い合わせなど)
- カスタマーサポート、カスタマーサクセス履歴
- アンケート回答(お客様満足度調査への回答など)
- 顧客区分(見込み客、既存顧客、休眠顧客、優良顧客など)
最後の「顧客区分」は自社の基準で顧客を区分している場合に追加される項目です。
ハウスリスト作成・管理のツール
リストの作成・管理ができるツールとして、「企業データベース」「名刺管理ツール」「MAツール」があげられます。
「企業データベース」はユーソナー、帝国データバンクなどの企業情報データベースを保有している会社のことで、主に白地リストの管理に使用されます。
したがってハウスリストを作成・管理するツールとしては、名刺管理ツール、MAツールの2つが挙げられます。
名刺管理ツールでは担当者情報を管理できますが、個人の詳細な行動履歴まで管理することができません。
ハウスリストを活用したマーケティングを行う場合は、個人の興味関心に関連する詳細な情報を登録・一元管理して、One to Oneのマーケティング施策に活用することができるMAツールが最も適しています。
ハウスリストの作成手順と注意点
ハウスリスト作成の流れ、注意点を解説します。
ハウスリストの作成手順
ハウスリストの作成手順は以下の通りです。
- 項目の設定
- 既存の顧客データをリスト化
- 新たなリードの獲得
- フラグの付与(セグメント分けなど)
- データクレンジング(名寄せ・更新)
1)項目の設定
ハウスリストの項目を設定します。基本情報以外の項目は、業種や業態によっても違いますが、前述した必要項目の解説を参考にしてください。項目は必要なものに絞り込み、増やし過ぎないようにします。
必要項目の設定とあわせて、取得時の同意管理やプライバシーポリシーとの整合性を確認することも大切です。
2)既存の顧客データをリスト化
名刺データ、取引先名簿など、手持ちの顧客データをリストに入力します。
入力作業ではミスを防ぐため、1人で完了させず、2人以上でダブルチェックをします。
3)新たなリードの獲得
日々のマーケティング施策により集客したリード情報をハウスリストに追加していきます。施策例として以下があります。
・展示会での名刺交換
・資料ダウンロードでの登録
・ウェビナー/セミナー/イベント申込
上記でいうと名刺交換はオフライン、それ以外はオンライン経由で収集します。デジタル、アナログの情報を管理するためにも、MAが適しています。
シャノンのMAは、オンライン、オフラインのすべての接点を一元管理でき、インサイドセールスの電話内容や営業の商談情報などを「活動履歴」としてデータ化できます。
4)フラグを付与
リードには購買意欲の高さによって「コールド」「ウォーム」「ホット」の区分を付与したり、担当者が管理職であった場合にフラグを付けたりします。これらの区分によりその後のリードナーチャリング施策がしやすくなります。
5)データクレンジング
蓄積したデータは精度、鮮度を高く保つ必要があり、データクレンジングが欠かせません。
重要な作業として名寄せとデータの更新があります。
名寄せ
展示会で名刺交換したリードが資料ダウンロードでも登録されていた場合、複数名が登録されてしまいます。これを1名に統合することを名寄せといいます。このとき、アルファベットやカタカナなど表記ゆれがあると別のリードになってしまうのでは困ります。
MAでは一定のルールを設定してさまざまな表記を統合して名寄せをすることができます。
参考:【簡単】データクレンジングとは?手順やメリット、名寄せとの違いを解説
データの更新
ハウスリストは一度収集すれば終わりではなく、常に情報を更新していく必要があります。担当者の異動、会社の住所移転、社名変更などがあれば抜けもれなく更新しましょう。
ハウスリスト作成上の注意点
ハウスリストを作成するときの注意点として、以下が挙げられます。
定期的にメンテナンスする
前述したように、ハウスリストのデータを定期的に更新し、正確性を保つことが重要です。ハウスリストの品質保持が施策の成功率を高める重要なポイントです。
項目を増やし過ぎない
たとえば資料請求のために個人情報を入力するフォームで、入力項目が多ければユーザーが離脱してしまう可能性が高くなります。項目は精査して絞り込むことが大事です。運用・管理業務面でも、項目が増えるごとに煩雑になり大変になるため、必要な数以上は増やしすぎないようにしましょう。
個人情報保護法などの規制に準拠する
日本では個人情報保護法、海外ではその国のルールに沿って情報収集する必要があります。収集したデータの利用目的については「プライバシーポリシー」として明示します。
まとめ
本稿のポイントは以下です。
1. ハウスリストとは、自社が接点を持ったことがある顧客や見込み客のリストです。
2. ハウスリストのメリットとして、以下があります。
・One to Oneマーケティングが可能
・LTV向上に有効
・個人情報保護に抵触するリスクが低い
3. ハウスリストの収集方法として、以下があります。
・名刺交換
・セミナー、ウェビナーなどのイベント申込
・資料ダウンロード、メルマガ登録
・問い合わせフォーム
・SNS
・会員登録
4. ハウスリストの活用方法として、以下があります。
・リードナーチャリング
・休眠顧客の掘り起こし
・アップセル・クロスセル
・新規事業、新商品の紹介
・顧客分析
5. 白地リストとは、自社と接点を持ったことがない見込み客リストのことです。ハウスリストよりは効率が低いですが、ハウスリストを補うために活用されます。
6. ハウスリストの必要項目は、大きく分けて以下の3種類です。
・企業の基本情報
・担当者の情報
・興味・関心度に関連する情報
7. ハウスリストの作成と管理には、MAツールが適しています。
8. ハウスリストは以下の手順で作成します。
1) 項目の設定
2) 既存の顧客データをリスト化
3) 新たなリードの獲得
4)フラグを付与
5) データクレンジング
最後に、シャノンのマーケティングオートメーションでは、データの一元管理による効率的なリード獲得とナーチャリングが可能です。
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