カスタマージャーニーとは、顧客がある製品やサービスに出会い、興味を持ち、検討し、購入し、使用し、その後評価や共有に至る一連の過程や体験のことを指します。
なぜカスタマージャーニーが重要かというと、マーケティング施策を進めるうえで、顧客をより深く理解することが欠かせないからです。
今回は、カスタマージャーニーとは何か、そしてその重要性を理解し、カスタマージャーニーマップの作り方もわかりやすく解説。その後、カスタマージャーニーを施策に展開するときに役立つ「購買ピラミッド」についても紹介します。
カスタマージャーニーの基本を解説
カスタマージャーニーとは何か、なぜ重要なのかについてわかりやすく解説します。
カスタマージャーニーとは?
カスタマージャーニーとは、「商品を知り、興味を持ち、購入したいと考え、購入にいたる」といった顧客の購買行動の全体像を指します。「広告」「SNS投稿」「店舗」などのさまざまなタッチポイントに立ち寄ったり、ときには前に戻ったりするところを旅の行程になぞらえて、こう呼ばれます。
以下はBtoBのカスタマージャーニーのイメージ図です。図に示されているように、デジタル、アナログを含めて、顧客との多くのタッチポイントがあります。
カスタマージャーニーマップとは?
カスタマージャーニーを分析するときは、「カスタマージャーニーマップ」を作成します。
以下は、BtoCのカスタマージャーニーマップの例です。
フェーズ | 認知 Attention |
興味 Interest |
検索 Search |
購買 Action |
共有 Share |
行動 | 商品を知る | さらに情報を受け取る | 自分から情報を検索する | 購入する | 感想を共有 |
---|---|---|---|---|---|
タッチポイント | 広告 | SNS | ECサイト | SNS | |
感情 | 困りごとを解決したい | この商品が役立ちそう | 商品をくわしく知りたい | 買ってみたらよかった | 他人にもおすすめしたい |
施策例 | Web広告 | SNS広告 | Webサイト | メールマーケティング | SNSアカウント運用 |
このように、カスタマージャーニーマップでは一番上の項目で顧客の行動をフェーズごとに分けて、それぞれのタッチポイントを整理します。これにより、顧客行動に合わせた抜けモレのないマーケティング施策を立案できます。
また、カスタマージャーニーマップは「顧客行動モデル」に基づいて作成されます。
上の例でいうと、横軸にフェーズとして「AISAS」(Attention、注意→ Interest、関心→ Search、検索→ Action、購買→ Share、共有)をとり、各フェーズについてそれぞれ分析していきます。
縦軸には上記に示した「行動」「タッチポイント」「感情」などのほかに、顧客の考えを深く理解するための「インサイト」や、具体的な施策展開を検討するための「コンテンツ」「対策」などを並べてマップを作成することもあります。
BtoBのカスタマージャーニーマップは作成例とともに後半で紹介します。
カスタマージャーニーマップを作る目的
カスタマージャーニーマップを作成する目的は、主に以下の2点です。
多様化・複雑化する顧客行動を理解する
購買にいたるまでの顧客の行動は多様で、さまざまなタッチポイントを経ながら進んでいきます。広告をクリックしてWebサイトを閲覧した人がそのまま購買に進むこともありますが、そうではない場合も多く、SNSで再度情報を見たり、自ら検索したり、しばらく自分で考える時間を要したりします。そんな顧客の行動をできるだけ詳細に理解するために、カスタマージャーニーが有効です。
施策の抜けモレをなくす
カスタマージャーニーマップにより、顧客が広告で見た商品に興味をもっているとき、SNSで再度商品の情報を目にすることでさらに購買意欲が高まると分析される場合を考えます。施策として広告やWebサイト運用はあるがSNSでの情報発信をしていなかったら、多くの人が購買へと進まない可能性が出てきます。このような施策の抜けモレをなくし、シームレスに顧客をフォローすることが目的です。
カスタマージャーニーマップを作成するメリットと注意点
カスタマージャーニーを作成するメリットとして、以下が挙げられます。
1)複雑化しているユーザーの行動を見える化できる
BtoC、BtoBを問わず、顧客の購買プロセスは多様化・複雑化しています。Webページ、SNS、動画サービスなどデジタルのチャネルが増え、ユーザーが自ら、日常的に多くの情報を得られるようになったことがその一因です。
カスタマージャーニーマップを作成することにより、多様で複雑でありながらもそこに一定のパターンがある見込み客や顧客の行動を、見える化して理解することができます。
2) One to Oneマーケティングのシナリオ設定に役立つ
Aさんは商品を認知したばかり、Bさんは商品に対して興味・関心を高めている段階、というように見込み客ごとに異なる立ち位置を、カスタマージャーニーマップのなかでプロットすることにより、全体を俯瞰でとらえ、それぞれの顧客に対して最適な、次にとるべき施策を明確にすることができます。つまり、顧客ごとに異なるアプローチをするOne to Oneマーケティングの実践に役立ちます。
参考:One to Oneマーケティングとは? MAで効率化できる具体的手法を解説
一方、カスタマージャーニーの注意点は以下です。
1) ユーザー行動を適切に反映しきれない場合もある
顧客行動を理解するためのカスタマージャーニーマップですが、多様で複雑なすべての顧客をカバーすることは難しいといえます。カスタマージャーニーから外れた行動パターンをとる人のなかに有力な見込み客が含まれていて、見落とされる可能性もないとはいい切れない現状があります。
2)運用面で煩雑さ・難しさがある
商品ごとのカスタマージャーニーマップの作成、それをもとにした施策の決定とKPIの設定、さらにその後の運用までを含めると、多くの作業量となり、手間がかかりすぎることがあります。
なお、カスタマージャーニーマップを作成したうえで施策を展開するにあたり、マーケティング初心者でも参考にしやすい概念として、シャノンでは「購買ピラミッド」を提案しています。購買ピラミッドについては後半のシャノンが提案する「購買ピラミッド」とはで紹介します。
カスタマージャーニーマップの作り方
BtoBにおけるカスタマージャーニーマップの事例を示しながら、カスタマージャーニーマップの作成方法や考え方を解説します。
購買行動のモデルを再確認
いくつかの「購買行動モデル」については、マーケティングのフレームワークのひとつとして今までにも紹介してきましたが、カスタマージャーニーマップの最上段の「フェーズ」を決める際にも活用されています。
AISAS
インターネット時代の基本的な購買行動モデルです。購買を検討するときには「検索」、購買後には「共有」というプロセスが一般化しました。
A:Attention(認知)
I:Interest(興味)
S:Search(検索)
A:Action(行動)
S:Share(共有)
現代は情報を得る手段が多様化しているので、AISASから進化したいくつかの購買行動モデルが活用されています。
BtoCの商品でSNSによって情報を得る顧客が多い場合は、以下のフレームワークなどが用いられます
ULSSAS
U:UGC(認知)
L:Like(いいね!)
S:Search1(SNS検索)
S:Search2(Google・Yahoo検索)
A:Action(購買)
S:Spread(拡散)
SEAMS®
S:Surf(回遊)
E:Encounter(遭遇)
A:Accept(受容)
M:Motivation(高揚)
S:Share(共有)
ULSSAS、SEAMS®を含むBtoCの購買行動モデルについては、以下の記事でくわしく紹介しています。
BtoCマーケティングとは?2024年の最新事情をふまえ、これからのBtoCマーケティングを考える
ほかに、BtoCだけでなくBtoBのカスタマージャーニーマップでもよく使われるモデルとして「AISCEAS」があります。
AISCEAS
AISCEASは、前述した「AISAS」のなかにC(比較)、E(検討)というプロセスを位置づけます。
A:Attention(認知)
I:Interest(興味)
S:Search(検索)
C:Comparison(比較)
E:Examination(検討)
A:Action(行動)
S:Share(共有)
CのComparisonは、現在使用している商品や競合他社製品と比較するフェーズです。インターネット上の比較サイトを見ることもあります。
EのExaminationは、詳しく検討することです。BtoCであれば口コミサイトを見たり、友人の意見をきいたりします。BtoBの場合はウェビナーに参加したり、営業担当者の説明を受けたりする段階です。
また、BtoBでは最後のSにShareに代えてSatisfaction(満足)を設定し、アフターフォローに着目することもあります。
カスタマージャーニーマップを作成する手順
カスタマージャーニーマップを作成するときの主な手順は、以下の通りです。
1)ペルソナを作成する
まず、典型的な一人の顧客像であるペルソナを設定します。カスタマージャーニーの主体としてのペルソナをできるだけ詳細に設定することが、カスタマージャーニーマップの精度を高めます。BtoCの場合、顧客の年代、職業、家族構成、消費性向などが主な設定項目となります。BtoBの場合のペルソナには所属する企業、役職などが追加されます。
以下は、BtoBのペルソナの一例です。
このようなペルソナの作成方法とペルソナの基礎知識は、以下の記事で詳しく解説しています。
ペルソナマーケティングとは?設定するメリットや作成方法、具体例を紹介
2)フェーズ(横軸)を決める
カスタマージャーニーマップの横軸には購買行動のフェーズを設定します。前述したように、BtoBの購買フェーズとしてAISCEASが適用されることが多いですが、そのほかに、「購買」の後のフェーズを追加することもあります。たとえば、サービスの「導入・活用」「継続・再購入」などです。
3)顧客の行動・感情、タッチポイント、自社のコンテンツなどの項目(縦軸)を決める
縦軸の項目としてまず顧客の「行動」「思考(または感情)」などを設定します。次に、顧客と企業の接点となる「タッチポイント」、続いて企業側の「コンテンツ」「施策」などを設定することが多いです。
また、BtoBの特徴として、顧客が一人ではないという点があります。最初に対象となるのは企業の担当者一人だけですが、具体的な検討が始まれば担当者の上司、担当部署の他のメンバーなどが参加するようになり、製品導入後はその製品を使う全員が関わってきます。
4)縦軸の最後の項目で、具体策を整理する
マップ全体の項目を埋めていき、縦軸の最後の項目として重視する施策や対応策を整理します。
以上のような手順による、BtoBのカスタマージャーニーマップの作成例は以下のようになります。
BtoBマーケティングにおけるカスタマージャーニーマップの有効性
カスタマージャーニーマップは、BtoBマーケティングにとって以下の点で有効です。
長期にわたる見込み客の行動をフォローできる
BtoBではBtoCに比べ、購入までに要する期間が長くなる傾向にあり、商品やサービスの購入を決定するまでに通常で半年~1年、長いときにはそれ以上かかります。
企業は1年単位で予算を決めていること、担当者だけでなく上司も含めた社内の意思決定に時間を要することなどが要因です。
したがってBtoBでは見込み客を長期にわたってフォローし続けることになります。
見込み客の状況を上長や他部門に報告するとき、マーケティング担当者が交替して情報を引き継ぐときなどに、カスタマージャーニーを用いて確認すれば便利です。
見込み客を顧客へと引き上げるマーケティング活動のことを「リードナーチャリング」といいます。
リードナーチャリングにはメールマーケティングのほかセミナー/ウェビナーの実施、電話フォローなどすべてのマーケティング施策が含まれます。
リードナーチャリングを最適なシナリオに沿って進めるためにカスタマージャーニーを使用することもあります。
リードナーチャリングとは?成果を出す7つの手法や成功事例を紹介
社内のチームでマーケティングの全体像を共有できる
BtoBの商材を扱う企業では、マーケティング部門が見込み客の獲得(リードジェネレーション)、見込み客の長期フォロー(リードナーチャリング)を行い、商談可能な見込み客となった時点で営業部門に引き渡し、その後、営業部門が商談から成約までを担当します。
また、マーケティング部門のなかでもセミナー/ウェビナー担当、メールマーケティング担当などが分かれている場合もあるでしょう。
このように複数のチームが作業を分担しているとき、カスタマージャーニーは全体での意識の共有に有効です。
各部門のメンバーは、全体の方針なかでどの部分を自分が担当しているのか、その目的は何か、いつ・どの部門に連携が必要なのか、などが明確になります。
シャノンおすすめ、カスタマージャーニーを補完する「購買ピラミッド」とは?適切なツールの選択と活用がポイント
カスタマージャーニーマップは顧客理解を深め、マーケティングの方向性を可視化するという点で有効ですが、項目が細分化されているため、そのあとの施策への展開と運用、検証や改善といった段階においてはやや複雑になりがちです。
そこで、マーケティングの全体像を把握するためのフレームワークとして、シャノンでは「購買ピラミッド」を提案しています。
シャノンが提案する「購買ピラミッド」とは
購買ピラミッドは、顧客の行動と期間に応じて、「認知」「興味」「関心」「比較・検討」「商談」の各フェーズで定義・管理するフレームワークです。
企業ごとに顧客の購買フェーズの分類は変わってきますが、シャノンでは5つのフェーズに分けています。
たとえば、最初は見込み客を「認知」に位置付け、半年以内にWebアクセスがあった場合は「興味」、
半年以内に資料請求・デモの申込があれば「検討」など、上のフェーズへと移行していきます。
分類されたフェーズごとに、適切なマーケティング施策を実施していきます。
購買ピラミッドを使用するメリット
購買ピラミッドは、以下のようなメリットがあります。
1)自社のマーケティング状況を俯瞰して把握できる
ピラミッドであれば、顧客の認知から、目標である商談にいたるまでの各フェーズの状況を管理しやすく、直観的に把握できます。今、自社の見込み顧客が、どの段階にあるのか。それぞれの段階の顧客がどのぐらいの数で、その中でのスコアの状況がどのようになっているかがわかりやすく、企業の中での課題を共有しやすいといったメリットがあります。
2)フェーズごとの分布と推移が分かる
特にBtoBでは購買までに検討期間が長い傾向にあり、マーケティングにおいて顧客の興味関心度を引き上げていくことは欠かせません。自社のリードに対し 何らかの施策を実施したら、 結果をもとに見込み客のフェーズは上がる、現状維持、下がる、のいずれかに再分類されます。そのフェーズごとの分布と推移が分かることが、購買ピラミッドを活用するメリットです。
購買ピラミッドを使って、フェーズごとの分布と推移を知るというのは、具体的には以下のようなことです。
● メルマガ配信を許可している認知フェーズの層は、20,000人いるが、ここ数ヶ月減少傾向にある
● 興味フェーズの層は、4,000人で横ばい傾向である
● 関心層は400人いて、比較・検討層に引き上がる層もいる。
● 比較・検討層は100人で、商談への引き上げも増加している。
フェーズの判定については、MAを使用することで自動化が可能です。
ペルソナやカスタマージャーニーマップを作成して顧客の購買行動を理解、確認した後、各フェーズの施策を展開していく作業においては、購買ピラミッドを活用するのもひとつの方法です。
ただし、どのようなフレームワークが適しているかは業種や商品・サービスによって異なります。多様なツール・フレームワークを試しながら、自社に合う方法を選びましょう。
購買ピラミッドについては、「自社のマーケティングの全体像をつかむフレームワーク「購買ピラミッド」とは」の記事でくわしく解説しています。
また、シャノンの購買ピラミッド運用事例を「刈り取り広告を2年間続けて気づいた、デジタルマーケティングの落とし穴」でご覧いただけます。
まとめ
本稿のポイントは以下です。
1. カスタマージャーニーとは、「顧客が商品を認知してから検討を経て購入する」といった購買のプロセスのことです。カスタマージャーニーマップによって可視化されます。
2. カスタマージャーニーマップを作成する目的は、主に以下の2点です。
・多様化・複雑化する顧客行動を理解する
・施策の抜けモレをなくす
3. カスタマージャーニーマップを作成する手順は以下の通りです。
1)ペルソナを作成する
2)フェーズ(横軸)を決める
3)顧客の行動・感情、タッチポイント、自社のコンテンツなどの項目(縦軸)を決める
4)縦軸の最後の項目で、具体策を整理する
4. マーケティングの全体像を把握するためのフレームワークとして 、4つのフェーズに分ける「購買ピラミッド」も選択肢のひとつです。
本記事の後半では購買ピラミッドの概要をご紹介しましたが、「マーケティングオートメーションのはじめかた」という資料で、購買ピラミッドを使った具体的な施策の整理と実行についてご紹介しています。
ぜひ、お手元へダウンロードして業務にお役立てください。
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