カスタマーサクセスとは?業務内容や成功事例、LTVを最大化する手法をわかりやすく解説

カスタマーサクセスとは、その名の通り「顧客の成功」を実現する業務です。

2010年代以降、BtoBのサブスクリプションサービスの広がりとともに「カスタマーサクセス」が一般化しました。現在、カスタマーサクセスはサブスクリプション以外のビジネスやBtoC領域でも取り入れられ、売上につながる成果を上げています。

今回は、カスタマーサクセスとはどんな業務か、目的とするLTVの最大化とは何かをについて解説し、カスタマーサクセスの具体的な業務内容とKPI、成果を上げるポイントについても述べていきます。最後にシャノンの事例もご紹介します。

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カスタマーサクセスとは?カスタマーサクセスが目指すLTVの最大化とは?

カスタマーサクセスとはどんな業務か、カスタマーサクセスのキーワードであるLTVとは何かについて解説していきます。

カスタマーサクセスとは何か

カスタマーサクセス(Customer Success)を直訳すると「顧客の成功」ですが、ビジネス用語としてのカスタマーサクセスは、「顧客の成功」を実現するための業務、部門、専門職のことをいいます。

カスタマーサクセスの業務は、企業の売上を創出するマーケティングと営業活動のなかで位置づけられます。以下は現代の営業スタイルについての著書『ザ・モデル』で紹介されている図で、カスタマーサクセスの位置づけが示されています。

カスタマーサクセスの役割

図が示すように、カスタマーサクセスは、取引が開始した顧客に対して、顧客の成功を働きかけます。具体的には、自社のサービスの利用を促進し、契約の長期継続やリピート購入を目指します。

カスタマーサクセスの目的は、LTVの最大

先ほどの図にもあるように、カスタマーサクセスの目的はLTVを最大化することです。

LTV(Life Time Value)は顧客生涯価値と訳され、一顧客が自社にとってどのくらいの利益をもたらすのかを長期的に計測した指標です。

業界や市場全体が成熟化傾向にある場合、新規顧客の獲得は必然的に競合との競争となるため新規顧客を獲得するハードルが上がっています。このような背景から、既存顧客と長く取引を継続することを重視すべきというLTVの考え方が浸透してきています。

LTV最大化のためにカスタマーサクセスがまず目指すのは、継続的な購入です。カスタマーサクセスが目指す顧客の成功とは、顧客が自社のサービスを十分活用することにより生産性向上や売上拡大などのメリットを得ることです。

次に、顧客との信頼関係を深めて、顧客ロイヤリティ向上を目指します。
アップセル・クロスセルを増やすことも重要です。アップセルとはより高額な商品/サービスを販売すること、クロスセルは、自社の別の商品/サービスを販売することです。

LTVの最大化はマーケティングや営業などと共有する大きな目標ですが、カスタマーサクセスはその最前線に立っているといえるでしょう。

※カスタマーサクセスとLTVの関係性については、以下でくわしく解説しています。
LTVとは?BtoBマーケティングにおけるLTVの重要性、施策、成功事例を解説!

カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い

従来からある「カスタマーサポート」という業務は、顧客を支援するという意味でカスタマーサクセスと似ています。違いは何でしょうか。

カスタマーサポートは顧客から疑問や不満、クレームがあった場合に対応します。

しかし、カスタマーサポートに一切連絡をしてこない顧客は商品やサービスに満足しているのでしょうか。実際には、カスタマーサポートに連絡をしてくる顧客よりも多数の顧客が、静かにサービスを解約したり、商品の購入をやめたりしています。カスタマーサクセスは、このような「サイレントカスタマー」にも能動的に関わります。

以下の表でカスタマーサポートとカスタマーサクセスの違いをまとめています。

カスタマーサポート カスタマーサクセス
目的 顧客の疑問・不満を解決 顧客のビジネス成功を支援
スタイル 受動的(リアクティブ) 能動的(プロアクティブ)
顧客との接点 メールや電話 対面を含む
顧客フォロー 個別的 継続的
KPI 応答件数など 解約率、LTVなど

カスタマーサクセスが重視される背景

カスタマーサクセスの業務が重視されるようになった背景として、以下が挙げられます。

SaaSとサブスクリプションの浸透
SaaS(Software as a Service)とは、クラウド上に作られたアプリケーションやサービスを、インターネットを通じて利用することをいいます。
現代は、MA・SFA・CRM、ストレージ、会計ソフトなど多くのサービスがこの形で提供されています。
SaaSの多くは月額××円などの定額制で、このような料金システムをサブスクリプションサービスといいます。
サブスクリプションモデルは顧客にとって契約のハードルが低く利用開始しやすい一方、解約することも簡単です。
したがって企業の側は解約されないために、顧客がサービスを十分に活用できるよう、契約後のフォローに務める必要性が生じました。
最近ではBtoCビジネスでもサブスクリプションモデルが拡大し、ここでもカスタマーサクセスが重視されています。

LTVを重視する傾向
顧客の満足度を高めて解約率を下げるだけでなく、さらに進んで、顧客のロイヤリティ向上や「ファン化」を図ることが長期的な売上に大きく貢献することが知られるようになってきました。
具体的には、新規に顧客を獲得するコストであるCACと、既存顧客の売上であるLTVをバランスよく保つことが重要で、企業はLTV最大化をマーケティングの重要な柱とすることが一般化しています。

※CACについては、以下でくわしく解説しています。
CAC(顧客獲得単価)とは?LTVとの関係・改善方法・計算用テンプレートを紹介 !

※ロイヤリティについては、以下でくわしく解説しています。
ロイヤリティマーケティングとは?企業の成功事例をもとに解説

カスタマーサクセスとはどんな業務か、メリットとデメリットは何か

カスタマーサクセスの具体的な業務内容、KPI、導入することのメリットとデメリットを確認します。

カスタマーサクセスの具体的な業務内容

カスタマーサクセスの具体的な業務は多岐にわたり、業種や企業ごとに内容は異なりますが、主に以下のような業務があります。

段階 目標 業務内容
オンボーディング 導入を支援する
  • 契約業務
  • 初期設定作業
  • 基本機能の操作支援
導入促進 導入の成果が出るよう支援して、解約率を防止する
  • 顧客のビジネスに合わせた活用方法の提案
  • 顧客の課題をヒアリングして、解決策を提供
  • 利用状況をモニタリングし、利用が少ない顧客をフォロー
  • 顧客の要望をヒアリングし、開発部門に連携
  • 顧客に役立つ最新情報の提供
活用拡大 顧客のロイヤリティをさらに高める
  • アップセルやクロスセルのニーズを担当部門に連携
  • ユーザー会などでユーザー間のコミュニケーションを促進

カスタマーサクセスのKPIとKGI

カスタマーサクセスのKPIとしては、解約率がよく用いられます。
カスタマーサクセス業務の指標としては、他にアップセル・クロスセル率、NPS(ネットプロモータースコア)なども有効ですが、期間ごとに測定できるため解約率が適当といえます。

カスタマーサクセスは、顧客がサービスを十分に活用して満足している状態をめざすことはもちろんですが、そのことが顧客企業の成長に明確に貢献している状態をゴールとします。KGIとしてはLTVが適当です。

カスタマーサクセスのKPI、KGIの代表例を改めてまとめると以下になります。

カスタマーサクセスのKPI : 解約率
カスタマーサクセスのKGI : LTV

カスタマーサクセス導入のメリットとデメリット

カスタマーサクセスの導入は、以下のようなメリットをもたらし、最終的にLTVの最大化というゴールを目指します。

1) CX(カスタマーエクスペリエンス)を向上させる
CX(Customer Experience)とは顧客体験のことです。
CXは商品/サービスを認知したときに始まり、営業担当者とのやりとり、契約・納品、購入した商品やサービスの利用まで、すべての段階における体験を指します。
CXの向上は売上拡大に不可欠といえます。
そのなかでカスタマーサクセスが主に関わるのは「購入後」です。
BtoBの場合、CXの基準は明確です。購入した商品やサービスを利用した結果、顧客企業にとって「コスト削減」「売上アップ」などの数値化できる具体的な成果があれば、価値あるCXといえます。
カスタマーサクセスは、顧客が対価以上の利益や利便性を得られるように支援します。

※カスタマーエクスペリエンスについては、以下の記事でくわしく解説しています。
カスタマーエクスペリエンス(CX)とは?CX向上のメリットや具体策、企業事例とシャノンの施策もご紹介!

2)解約率(チャーン・レート)を下げる
顧客が解約するときの理由はさまざまですが以下、一例です。
「コストに見合う効果が得られなかった」
「担当者に他の業務もあり、ツールを使いこなせなかった」
このような企業の事情は、カスタマーサクセスが対応することで回避できた可能性があります。
顧客が解約を決断する前に、企業の課題を理解してソリューションを提案したり、他のプランを勧めたりといったフォローをします。
サブスクリプションにおける解約率は、商品の販売においてはリピート購入をしなくなる「顧客の離脱率」が同じ意味の指標です。

3)多くのロイヤルカスタマーを創出する
ロイヤルカスタマーとは、自社の商品/サービスを大いに活用し、競合他社から購入する可能性が低い、「お得意様」あるいは「ファン」のような顧客のことをいいます。
さらに、他の人に自社の商品やサービスを「おすすめ」してくれるのが理想的なロイヤルカスタマーです。
顧客をこのようなロイヤルカスタマーへと引き上げるのもカスタマーサクセスの役割です。
※ロイヤルカスタマーについては「ロイヤルカスタマーとは?その定義と、MA連携でロイヤルカスタマーを増やす手法」で詳しくご紹介しています。

一方、カスタマーサービスを導入するときのデメリットとしては以下のような項目が挙げられます。

1) 人材確保や他部門との連携が難しい
カスタマーサポート部門を立ち上げるのに十分な人材が確保できない、新規に採用しようとしても簡単ではないという問題があります。
またカスタマーサクセスは常にマーケティングや営業と連携して仕事をしていきます。
分業化と専門化を勧めながら成果を出すにはスピーディーな情報の連携や目標の共有が欠かせません。
他部門との連携には、あとで紹介するようなデジタルツールの活用が有効です。

2) 導入から活用できるようになるまでのハードルが高い
カスタマーサクセスを専門に行う部署の立ち上げから、人員の調整や採用、問い合わせの対応のマニュアル作りなど、基盤を構築するには時間もコストも掛かります。
メインとなるカスタマーサクセス業務を行う部署以外にも、CHS(Customer Health Scoreの略)と呼ばれる顧客情報や指標を管理する部門や、VoC(Voice of Customerの略)と呼ばれる顧客の要望を商品やサービスに反映する部門との連携が必要です。部門間連携によりカスタマーサクセスが機能する体制を構築していくため、時間とコストが掛かり結果として導入のハードルが高くなりがちな側面があります。

3) 想定した成果が挙げられない可能性もある
上記のように時間やコストをかけても成果が上げらない可能性もあります。
カスタマーサクセスで最も重要な「顧客の成功」の定義付けを間違えていたり、アプローチ方法が正しくないと、顧客満足は得られません。
その結果、解約率の低減やLTV向上には繋がらなくなります。

カスタマーサクセスを成功させるポイントと、おすすめのツール

カスタマーサクセスのメリットとデメリットを踏まえたうえで、カスタマーサクセスを成功させるポイント、業務に役立つデジタルツールについて紹介します。

カスタマーサクセスを成功させるポイント

カスタマーサクセスを成功させるポイントとして、以下が挙げられます。

「リテンションマーケティング」を実践する
リテンションマーケティングとは、既存顧客を対象とするマーケティングのことです。
LTVを最大化するためには既存顧客についても深く理解して、適切なOne to Oneマーケティングを実施していく必要があります。
したがって、カスタマーサクセスにはマーケティングの視点も必要です。
適切なリテンションマーケティングにより、解約率を下げアップセルやクロスセルを増やしていくことができます。

マーケティングや営業の担当者とスムーズに連携する
リテンションマーケティングのためにはマーケティング部門と、解約の回避や追加受注については営業部門との連携が欠かせません。
他部門との情報の共有と組織的な連携がポイントです。

ハイタッチ、ロータッチ、テックタッチへの戦略を明確にする
顧客をロイヤリティの度合いによって「ハイタッチ」「ロータッチ」「テックタッチ」に分類し、高いLTVが期待できるハイタッチの顧客に対しては「月1回以上訪問」、ロータッチは「3か月に1回以上」などのルールを決めることで効率よく顧客をフォローできます。
テックタッチに該当する顧客は主にデジタルで接点を保ちます。

ハイタッチ、ロータッチ、テックタッチの分類

デジタルツールを活用する
顧客の情報をデジタルで一元管理することにより、顧客の状態を常にモニタリングして、課題が見つかればスピーディーにフォローができます。
業務効率が上がるのでカスタマーサクセス一人あたりが担当できる顧客数が増えます。
また、営業部門やマーケティング部門の担当者との連携もスムーズになります。

カスタマーサクセス業務におすすめのツール

カスタマーサクセス業務におすすめのツールとして、以下があります。

CRM(Customer Relationship Management、顧客関係管理)
CRMは顧客管理ツールです。顧客の基本情報、売上情報、コミュニケーション履歴を一元管理できるので、カスタマーサクセス業務に有効です。
CRMにはBtoC向け、SaaS向けなどさまざまな種類があり、価格も無料から高額なものまで幅があります。
基本的な機能を備えたシンプルなCRMでもカスタマーサクセス業務には大いに役立ちます。

顧客理解に欠かせないCRMとは?マーケティングにどう役立てる ?

MA(マーケティングオートメーション)
見込み客の興味・関心を引き上げることが主目的のMAは、リテンションマーケティングにそのまま活用できるので、カスタマーサクセスにも有効です。
MAでは顧客がWebページを見た履歴を取得できますが、この機能が役立ちます。
次項ではMAによりシャノンが成果を上げている事例を紹介します。

シャノンのカスタマーサクセス部門立ち上げと、他部門と連携の具体例

シャノンがカスタマーサクセス部門を立ち上げたときのストーリー、現在、カスタマーサクセスとマーケティングの連携によって成果を上げている方法についてご紹介します。

カスタマーサクセスへの取り組み1年で解約数が7割減

国産MAを提供するシャノンはかつて、競合といえる商材が少なく、ブルーオーシャンで順調に営業活動をしていました。ところが、2015年頃から外資系MAベンダーが続々と日本に進出してきたことにより一気に市場はレッドオーシャン化して、シャノンの顧客も他社に流れ、解約率が上昇しました。

そこで2018年にカスタマーサクセスへの本格的な取り組みをスタート。1年後には解約数を7割低減させることができました。6人の担当者が定例ミーティングや日々のコミュニケーションで顧客の意見や課題を吸い上げ、「ユーザー会」などの解決策を提供。その結果は四半期ごとに評価していきました。この頃に立ち上げたユーザー会は現在、「ユーザーカンファレンス」として継続しています。

※シャノンのカスタマーサクセス立ち上げについて、以下のインタビュー記事 でさらにくわしくご紹介しています。
国産MAベンダーのシャノン、カスタマーサクセス実践1年で解約件数が7割減に

マーケティング部門のMAとカスタマーサクセスを連携する、5つの具体例

マーケティングはコールドリードをホットリードへと引き上げる、カスタマーサクセスは顧客を成功へと引き上げる、という似たベクトルの目標を持ち、どちらの部門もOne to Oneの継続的なコミュニケーションが重要なので、両部門にはナレッジの親和性があるといえます。

カスタマーサクセスとマーケティングの連携

シャノンでは、以下のようなカスタマーサクセスとマーケティングの連携を行っています。

1) サポートページを見ている
営業担当やカスタマーサクセスに直接連絡はないものの、サポートページへのアクセスがあった場合は、仕様や操作方法などについて疑問が発生しています。
早めにカスタマーサクセスから連絡をとり、問題解決できたか、ほかに課題はないかなどを確認するべき事例です。

2) 解約に関連するページを見ている
最も素早く対応するべき「解約アラート」もMAで取得しカスタマーサクセスに連携できます。
前述したようにサブスクリプションサービスの場合は簡単に解約できるので、迅速な対応が求められます。
解約アラートの通知

3) 違う商品/サービスの資料をダウンロードしている
顧客が契約中のサービス以外にも関心を示していると考えられます。
カスタマーサクセスが状況をヒアリングし、クロスセルの可能性がある場合は営業担当などにパスします。

4) ウェビナーへの申込があった
主に見込み客向けであるマーケティング部門主催のウェビナーに顧客がエントリーすることもあります。
情報を得たカスタマーサクセスは、顧客事情に合わせて個別にフォローします。アップセル・クロスセルへとつながる可能性もあります。

5)顧客企業の別の部署、別の社員からのコンタクトがあった
カスタマーサクセスがコミュニケーションをとっている顧客担当者とは別の人からの、LPへのアクセス・ウェビナー申込などがあり新規リードとしてMAに登録された場合です。
このときもアップセル・クロスセルの可能性が考えられるので、まずカスタマーサクセスが情報収集し、その後は適切な部門で担当します。

シャノンのMAでは、上記のうち1)~4)のようなデータを自動連携することができます。
5)の場合だけは一元化されていないデータなので、登録された企業名を確認して個別に担当部門に共有しています。

まとめ

本稿のポイントは以下の3点です。

1.カスタマーサクセスとは「顧客の成功」を実現する業務で、BtoBのサブスクリプション型サービスの解約を減らすために生まれました。今はBtoCやサブスクリプション以外でも導入されています。

2. カスタマーサクセスの目的はLTVの最大化で、カスタマーサクセスのKPIは解約率とすることが一般的です。

3. カスタマーサクセスを成功させるポイントは以下です。

  • リテンションマーケティングを実践する
  • マーケティングや営業の担当者とスムーズに連携する
  • ハイタッチ、ロータッチ、テックタッチへの戦略を明確にする
  • デジタルツールを活用する

最後に、シャノンのマーケティングオートメーションでは、データの一元管理による効率的なリード獲得とナーチャリングが可能です。


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