「STP分析」「4P分析」「SWOT分析」「AIDMA」「AISAS」「AISARE」「イノベーター理論」……
などなど、マーケティングには多種多様な分析手法や考え方の枠組みがあります。
日々の業務でフル活用したい分析手法もあれば、「普段使わないが、知識として重要」というものもあります。
今回は、「まずこれを知っておきたい」という基準でリストアップしたマーケティングの分析手法や考え方についてご紹介します。
まず、マーケティングの大きな分類を確認
まず、マーケティングの大きな分類について確認しておきます。
マスマーケティングとダイレクトマーケティング
マスマーケティングとは、不特定多数へ向けた商品・サービスの情報発信のことです。
主な方法はTVや新聞への広告出稿です。
ダイレクトマーケティングの伝統的な方法にはDMと電話による直接の売り込みがあり、ネットの普及以降は「リターゲティング広告」「SNS」「Eメール」などの新たな方法が加わりました。
マスマーケティングとダイレクトマーケティングの方法とメリット、デメリットは以下の通りです。
マスマーケティング | ダイレクトマーケティング | |
メリット |
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デメリット |
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ダイレクトマーケティングをさらに進化させて顧客一人一人とコミュニケーションをとるのが「1to1マーケティング」です。
ネットが普及した現在、ダイレクトマーケティングの比重が高くなりつつありますが、マスマーケティングも有効な手段として活用されています。
オフラインマーケティングとオンラインマーケティング
インターネットを経由する方法がオンラインマーケティング、それ以外がオフラインマーケティングです。
オンラインマーケティングをデジタルマーケティングと呼ぶこともあります。
また、オフラインマーケティングのうち相手と直接コミュニケーションをとる方法をリアルマーケティングといいます。
先ほどのマスマーケティングとダイレクトマーケティングの分類と合わせて図にしたものが以下です。
オフライン | オンライン | |
マス |
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ダイレクト |
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表を見ると、従来型のマスマーケティングはオフラインが多かったのが、ネットの時代になってオンラインの手段が増え、ダイレクトマーケティングの可能性が広がったことがわかります。
知っておきたいマーケティングの分析手法・9つ
消費者のニーズや市場が多様化するにつれ、マーケティング分析の手法も増えてきました。覚えておきたい分析手法をご紹介します。
事業を客観的に評価する「3C分析」
3C分析は、事業戦略を作成するときに用いられます。「3C」とはCustomer、Competitor、Companyの3つです。
- 顧客(Customer)…顧客が求めているもの、マーケットの規模や成長性など
- 競合(Competitor)…競合他社の強さ、参入の容易さなど
- 自社(Company)…自社の資金・生産能力・人材・ブランド力などのリソース
事業を評価するにあたり、3つのCそれぞれの環境要因を分析します。
事業の外部環境を知る「PEST分析」
外部環境を分野別に評価します。
- 政治(Politics)…消費税率、規制の強化・緩和など
- 経済(Economy)…景気動向、市場の成長、金利など
- 社会(Society)…少子高齢化、ライフスタイルの変化、流行など
- 技術(Technology)…最新の技術動向など
近年はこれに環境(Ecology)を追加して「PESTE」分析とすることもあります。
企業の内部環境を評価する「VRIO分析」
内部環境を分野別に評価します。
- 価値(Value)…企業自身が持つ資金、技術、人材などの価値
- 稀少性(Rarity)…技術の稀少性、競合の少なさ
- 模倣可能性(Imitability)…競合他社が模倣する場合の容易さ
- 組織(Organization)…組織運営の健全性
以上4つの視点から、自社の経営資源にどの程度優位性があるかを分析します。
内部環境と外部環境を比較検討する「SWOT分析」
内部環境、外部環境を対比させながら分析します。
《内部環境》
- 強み(Strength)
- 弱み(Weakness)
《外部環境》
- 機会(Opportunity)
- 脅威(Threat)
内部的には強みを活かし弱みの部分を補強し、外部的には機会の魅力と警戒すべき脅威を明らかにして検討します。
事業の脅威を知る「5フォース分析」
5フォース分析はマイケル・ポーターが提唱した手法です。事業をおびやかす存在の有無、今後脅威が現れる可能性を分析します。
- 競合他社…現在の競合他社との競争の激しさ
- 買い手の交渉力…BtoCなら消費者、BtoBなら顧客企業との力関係
- 売り手の交渉力…原材料を供給する企業との力関係
- 代替品の脅威…他の品やサービスに代替えされる可能性
- 新規参入の脅威…今後競合企業が参入する可能性
他社と比較して強み・弱みを明らかにする「バリューチェーン分析」
バリューチェーン分析もポーターが示した分析手法です。
バリューチェーンとは価値を生み出す企業のしくみのこと。自社の何が価値を生み出しているのかを知るために企業活動を主活動と支援活動の2つに分け、さらにそれを細分化します。
《主活動》
購買物流・製造・出荷物流・マーケティング/販売・サービス
《支援活動》
人事/労務管理・技術開発・調達活動・全般管理
細分化したそれぞれの機能を他社と比較して、自社の価値は何によってもたらされているか、自社の強み・弱みはどこにあるのかを明らかにします。
ターゲットを設定する「STP分析」
STP分析はフィリップ・コトラーがとなえた代表的なマーケティング手法です。どんな顧客へ向けて商品・サービスを提供するのかを絞り込むときに用います。
セグメンテーション(Segmentation)…顧客を分類する
セグメンテーションでは、年齢・性別・地域・職業・趣味や価値観などで顧客を分類し、それぞれのグループで自社商品がフィットするかどうかを検討します。
ターゲティング(Targeting)…ターゲットを設定する
分類した顧客グループのなかで、アプローチしたいグループを決定します。
ポジショニング(Positioning)…ターゲットに対する立ち位置を明確化する
競合他社と比較しながら立ち位置を明確にし、ターゲットに対してどんな商品・サービスを提供するか、差別化をはかります。
マーケティング戦略を具体化する「4P/4C分析」
商品やサービスを販売するために必要な戦略を分野ごとに決定する方法を「マーケティング・ミックス」といい、その代表例が「4P」「4C」です。
4Pは以下です。
- 製品(Product)…機能、デザイン、品質など
- 価格(Price)…事業目的に合う最適価格
- 流通(Place)…店舗か無店舗か、納期、品揃えなど
- プロモーション(Promotion)…広告宣伝
「4P」は売り手の視点であることから、その後、顧客側の視点に立った「4C」が生まれました。
- 顧客価値(Customer Value)
- コスト(CostまたはCustomer Cost)
- 購入しやすさ(Convenience)
- コミュニケーション(Communication)
4Pまたは4C、それぞれの視点から分析して適切な販売戦略を立てていきます。
「4P」「4C」については、以下の記事でくわしく紹介しているので参照してください。
マーケティングの4P・4Cとは? MAの前段階にある原則をあらためてチェック – シャノンのブログ
サービスを対象として4Pを拡大した「7P分析」
モノ消費から、コト消費へ。市場に占めるサービスの割合が増えた現代の分析方法として、コトラーが4Pに3つのPを追加したのが「7P」です。
7Pには4Pに以下が3つが加わります。
- 人員(Personal)…サービスを提供するスタッフ
- プロセス(Process)…サービスを提供する過程
- 物的証拠(Physical Evidence )…サービスを提供する空間、証明など
美容室を例にとると、サービスそのものだけでなく接客も大切です。
サービスを提供するプロセスでは予約受付、当日の案内、アフターフォローなどが問われます。
物的証拠としてはサービスの安心感を高める店舗の内外装、スタッフのライセンス表示などが重視されます。
以上ご紹介した9つの分析方法の関係性をまとめたのが以下の図です。
マーケティングでよく使われる考え方・理論
覚えておきたい、マーケティングで頻出する考え方・理論についてもまとめます。
消費者の行動モデル「AIDMA」「AISAS」「AISARE」
「AIDMA」は、1920年代のアメリカで生まれた法則です。
消費者がまず商品を知ってから購入するまでの行動をAttention(認知)、Interest(関心)、Desire(欲求)、Memory(記憶)、Action(行動)の5段階で示しました。
ネットの時代になり「AISAS」ができました。AIDMAとAISASを並べると以下のようになります。
AIDMAとAISAS
AIDMAとAISASでは行動パターンが違いますが、スピードも違います。
AISASでは購入行動のスピードが速く、ネット上であればA→I→S→A→Sまでが数分で完結することもあるでしょう。
企業が目指す消費行動のモデルはさらに「AISARE」へと進化しています。
AISARE
顧客がリピート購入を経て、SNSで自社商品を広めてくれるエヴァンジェリスト(伝道者)になってくれることが、現代マーケティングの目標となっています。
市場が成熟して「ニーズ」から「ウォンツ」「インサイト」へ
ニーズ(NEEDS)とウォンツ(WANTS)は似た言葉ですが、マーケティング用語としては違う意味をもっています。
- 「ニーズ」…何かが不足している、不満を感じている状態
- 「ウォンツ」…不足を解消するために「××が欲しい」という欲求が明確な状態
つまり、「空腹である」がニーズ、「ランチが食べたい」がウォンツです。
「ランチに新しくできた店のカレーが食べたい」というのはより明確なウォンツとなります。
現代はモノやサービスがあふれ、すでに消費者のニーズは満たされている場合が多く、マーケティングでは「ウォンツ」に訴える商品やサービスを提供することが求められています。
さらに、消費者自身が気づいていない欲求を「インサイト」といいます。
「ランチタイム利用できる、オフィス近くのスポーツジム」を考えてみます。
昼15分ほどのワークアウトができ、運動することで午後の仕事にリフレッシュ効果もあり定期利用するようになった場合、それは顧客のインサイトを掘り起こし、ウォンツを顕在化させることができた例といえます。
どちらも一長一短の「ブルーオーシャン」「レッドオーシャン」
マーケット全体を海に例え、以下のように呼んでいます。
- 「ブルーオーシャン」…静かな海のように競争がない未開拓のマーケット
- 「レッドオーシャン」…需要はあるが競争が激しい既存のマーケット
競争相手が少ないブルーオーシャンへ進めば競合他社はいませんが、いいことばかりではありません。
まだ市場にない独創的な商品やサービスで事業をスタートさせたとき、需要があるかどうかは不明です。
また、いったんブルーオーシャンで一つのビジネスが成功したときは、すぐ競合他社が参入してくるため、あっという間にレッドオーシャン化してしまうこともあります。
一方、レッドオーシャンへ参入する戦略もあります。そのメリットは「需要がある」ことです。競合他社と差別化できる商品力があれば参入も可能です。
ビジネスが成長するカギ「キャズム」と「イノベーター理論」
「イノベーター理論」は、新しい商品・サービスが市場に投入され、少しずつ市場に浸透していく過程を分析したロジャースの理論で、1960年代に発表されました。
市場が生まれてから成熟するにつれて出現する、購入を決める人の分類と割合は以下の通りです。
イノベーター(2.5%)
新しいもの好きで真っ先に新商品を購入しようとするコアユーザーです。
アーリーアダプター(13.5%)
流行に敏感で、イノベーターからの情報などですぐに購入を決めます。
アーリー・マジョリティ(34%)
早期に購入を決めるユーザー層です。
レイト・マジョリティ(34%)
周りの動向や反応を確かめてから購入を決めるユーザー層です。
ラガード(16%)
新しいものを受け入れることに懐疑的で、最後まで購入を決めない層です。
イノベーターとアーリーアダプターを合わせた16%を「初期市場」と呼びます。
初期市場までは浸透しても、その先のアーリー・マジョリティの購入が進まず、メインストリーム市場へ普及すること難しいことが知られ、そこににある深い溝=「キャズム」を超えることが重要とされています。
BtoBマーケティングにも有効な「ペルソナ」
ペルソナとは、典型的な顧客の人物像のことです。BtoCマーケティングに不可欠な手法とされていますが、BtoBでもペルソナ設定が有効です。
※ペルソナの作成方法や活用方法などについて、以下の記事でくわしく紹介しています。
見込み客の行動の理解をたすける「カスタマージャーニー」
カスタマージャーニーとは、ある商品やサービスを知った人が、ウェブへアクセスしたり、比較検討したりといった行動を重ねて、
次第に購入意欲を高めて購入へといたるまでの過程のことです。
以下はシャノンでよくご紹介しているデジタルとアナログを組み合わせた「デジアナマーケティング」の図版ですが、これもカスタマージャーニーの一例といえるでしょう。
デジタルとアナログ、それぞれの領域で行動しながら見込み客が商談や購入へと近づいていくことを理解するのに役立ちます。
BtoBマーケティングの実践に役立つ「購買ピラミッド」
「購買ピラミッド」はシャノンのマーケティングチームが使用しているフレームワークです。
見込み客の行動から「認知」「興味」「関心」「比較・検討」の段階別に分類し、数値の分布と推移を知ることで必要なマーケティング施策を実施していくのに役立ちます。
※カスタマージャーニーと購買ピラミッドについては、以下の記事でくわしく紹介しています。
メールマーケティングで使用されるカスタマージャーニーとは?活用上の注意点も解説
自社のマーケティングの全体像をつかむフレームワーク「購買ピラミッド」とは
まとめ
本稿のポイントは以下の3点です。
1. マーケティングは「マスマーケティング」と「ダイレクトマーケティング」、あるいは「オンラインマーケティング」と「オフラインマーケティング」に分類することができます。
2. マーケティングに欠かせない分析手法は次の9つです。
- 3C分析
- PEST分析
- VRIO分析
- SWOT分析
- 5フォース分析
- バリューチェーン分析
- STP分析
- 4P/4C分析
- 7P分析
3. マーケティングで覚えておきたい考え方として以下があります。
* 「AIDMA」「AISAS」「AISARE」
* 「ニーズ」「ウォンツ」「インサイト」
* 「ブルーオーシャン」「レッドオーシャン」
* 「キャズム」と「イノベーター理論」
* 「ペルソナ」
* 「カスタマージャーニー」
* 「購買ピラミッド」
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