マーケティングDXの基本について、「マーケティングDX【前編】定義やメリット、進め方、企業事例を紹介!」で解説しました。今回は【後編】として、具体的な施策を紹介していきます。
【前編】ではマーケティングDXの進め方として、以下を示しました。
【フェーズ1】課題を明確にして、組織を巻き込む
【フェーズ2】顧客情報の一元管理により、マーケティングDXの基盤をつくる
【フェーズ3】顧客体験の構築
【後編】では、フェーズ3「顧客体験の構築」とは何か、具体策や手順について述べていきます。シャノンが実際に行っているマーケティング施策とその成果を事例として紹介しながら解説する「実践編」です。
マーケティングDXの実践、「顧客体験の構築」について
マーケティングDXを推進する目的は、デジタルを活用してマーケティング部門を強化し、売上に貢献することです。そのための「顧客体験の構築」について解説していきます。
顧客体験の構築とは?
顧客体験とは、顧客企業が商品やサービスについて認知をするところから始まり、しだいに興味・関心が高まり、具体的な比較・検討段階を経て商談にいたるまでの、すべての体験のことです。
以下の図にあるように、顧客は購買までに、SNS、メルマガ、DM、資料ダウンロードなどの多様な体験を経ています。
顧客体験は一様ではなく、時間をかけてじっくり検討して商談にいたる人、ウェビナーなど何らかの体験を機に一気に商談へと進む人など、さまざまです。
つまり顧客体験の構築とは、顧客企業が商談へと至るよう、顧客を深く理解し、それぞれの顧客に最適化したOne to Oneの顧客体験を構築することです。
顧客体験の構築のための施策を、購買ピラミッドで整理
以下は、【前編】でも紹介した図です。
右の三角形が「購買ピラミッド」です。
購買ピラミッドは見込み客・顧客の購買への関心度を分類しています。三角形の面積の通り、商談に近いレベルへいくほど母数は少なくなりますが、購買の見込みは高くなります。
「認知~興味・関心層」は、商品やサービスについて認知し、有用性もある程度は理解をしているが、購買意欲は持っていない状況の顧客です。このような層をできるだけ多く集客したあと、各種の施策によりコミュニケーションを重ねて関心度を引き上げていく必要があります。
「比較・検討層」は、商品・サービスについて理解して、具体的に購買を検討している層です。購買の可能性が高いですが、競合他社を選ぶ可能性もあるため、タイミングを逃さず購買を促す施策が有効です。
顧客体験の構築のための主な施策を図の左側で整理しています。
認知~興味・関心層に対して:
- ホワイトペーパーや記事広告により集客
- SNSや動画、課題設定ウェビナーで比較・検討層へ引き上げ
比較・検討層に対して:
- 資料請求やWebトラッキングにより集客
- 比較・検討層向けのウェビナーで商談へ引き上げ
このように、顧客のフェーズに合わせた体験を提供していきます。
興味・関心層を集客する「リードジェネレーション」
マーケティング部門がまず行う施策が集客です。その手段として、たとえば以下があります。
- オウンドメディア
- メルマガ
- Web広告
- SNS
- ホワイトペーパー
- ウェビナー
このほかに、展示会やリアルセミナー、DMなどのオフラインの施策もあります。
これらの施策の目的は、幅広く見込み客(リード)のメールアドレスや名前を獲得することです。このような活動を「リードジェネレーション」といいます。
リードジェネレーションについてくわしくは、「リードジェネレーションとは?MA(マーケティングオートメーション)で効果的に見込み顧客を獲得する手法と事例を紹介」の記事で解説しています。
「集客の数が増えても、商談の数が増えない」という課題
リードジェネレーションの実施により、リードのリストを増やすことができます。つまり、興味・関心層がふえていきます。
ここで、「興味・関心層が増えても、比較・検討層や商談を増やすことに結びつかない」という、マーケティングチームにありがちな課題に直面することがあります。
また、過去に資料請求やホワイトペーパーのダウンロードを行った比較・検討層に近いリードも、何もしないままでは興味・関心層に下がってしまいます。
この課題を解決できるマーケティング施策を展開していくことが重要です。そのためには顧客が購買にいたるまでのストーリーを理解して、効果的なアプローチをしていく必要があります。ただし施策はより複雑・多様になっていきます。
マーケティングDXの具体策とは、こうした課題を解決するため、多様な施策を効率よく実践していくことです。
次項より、興味・関心層を比較・検討や商談のフェーズへ引き上げるための2つの施策例を紹介します。1つは「引き上げウェビナー」、2つめは「隠れ検討層の獲得」です。
興味・関心層を商談へ引き上げるための「ウェビナー」施策
漠然とした興味・関心はあるけれど、購買の決め手がない。多くのリードはそんな状態にあります。マーケティング施策により顧客の課題を明らかにして、購買へと結び付けていくための「引き上げウェビナー」について解説します。
ウェビナーをこれから始めたい方は「ウェビナーとは?配信のはじめ方、メリットやデメリットから集客のコツ までをかんたん解説」を参照してください。
ウェビナーを視聴するユーザーの傾向については、「シャノンが実施したアンケートによると「こっそり参加」が3割以上。ウェビナーの参加実態とは?」で紹介しています 。
興味・関心層の引き上げには、課題設定型のウェビナーが効果的
興味・関心層の顧客が購買へと進まない理由は、自社の解決すべき課題が明確になっていないからだと考えられます。したがって、次のマーケティング施策は、「顧客の課題設定」となります。
しかし顧客にとっての課題はたくさんあり、状況は明確ではありません。そんなときに本来有効なのは、従来型の対面営業で交わされるアナログな対話です。
見知らぬ人に同じセリフでコミュニケーションを取る場合でも、メールで聞くのと、面と向かって聞くのとでは成功率がかなり違うというコーネル大学の実験結果も報告されています。
このような対話の要素を取り入れ、かつ顧客が参加しやすい施策として「ウェビナー」があります。
興味・関心層を引き上げるための「課題設定ウェビナー」(以下、引き上げウェビナー)が有効です。
課題設定ウェビナー(引き上げウェビナー)の具体案
以下はシャノンが実施している引き上げウェビナーのスライド構成の例です。
顧客企業の課題を明確にするために、「Why=なぜ、この手法が必要なのか」を解説するために最も多くのコンテンツを割いています。
課題を明らかにしたあとで、「How=ではどうするのか」を示します。ソリューションとしてのシャノンのサービスを紹介するスライドは3枚という構成です。
引き上げウェビナーは、商談や売上に貢献しています。受注企業の8割以上が1年以内に引き上げウェビナーを視聴していたという実績が明らかになりました 。
引き上げウェビナーにより、商談単価が低減
引き上げウェビナーの実績は商談獲得の単価にも表れています。以下は、引き上げウェビナーをしない場合と実施したときの商談単価を示しています。
引き上げウェビナーにより累計リードが増えるとともに、ウェビナーの成果としての商談が追加されることにより、商談獲得の単価を下げることが可能です。
今回はウェビナー施策を紹介しましたが、「興味・関心層の引き上げ」の施策は他にもあり、「リードナーチャリング」施策の一環として実施されます。
セグメントメールやホワイトペーパーなどの施策については、「リードナーチャリングとは ?MAツールを武器に、BtoB顧客を引き上げるための5つのステップをわかりやすく解説」でくわしく述べているので、参照してください。
Webトラッキングにより「隠れ検討層」を獲得する施策
商談に結び付きやすいが、企業視点だと動きがわかりづらい「隠れ検討層」へのアプローチを解説します。
隠れ検討層とは?
一度は接点があったリードがその後しばらくの間休眠状態となり、しかし突然購買のアクションが始まることがあります。
そんなリードのアクションはそのまま商談、売上につながる可能性が高いですが、競合他社を選ぶこともあります。このような動きをするリードを「隠れ検討層」と位置付けます。
隠れ検討層は自社の課題が明確で、自ら情報収集して商品・サービスを選択しようとしています。このようなリードから「資料ダウンロード」などで接点を得るとき、その企業はすでに比較・検討を終えた段階かもしれません。
BtoBにおいては、潜在顧客企業がアプローチするのは比較検討の段階であり、商談する段階ではすで60%以上は意思決定済みといわれます。(※出典:Retailingtoday、E-consultancy、Acquity Group、CEB、ガートナー)
このような隠れ検討層を獲得するための施策が「Webトラッキング」です。
Webトラッキングで隠れ検討層を獲得
隠れ検討層となり得る顧客企業の状況をストーリー化したものが以下の図です。
最初に担当者が幅広く情報収集をするがその後は休眠状態となり、「上司が変わった」などの状況の変化により、急に比較・検討が始まります。
このような顧客企業の変化をWebトラッキングによって素早くキャッチすることができます。
しばらく休眠状態だったリードが製品紹介ページ、料金プランのページなどを閲覧したとき、「比較・検討フェーズ」にあると考えられます。このようなWeb閲覧の行動履歴があればアラートが送信されるよう設定しておくことにより、リアルタイムで状況を知ることができます。
さらに、MAでは顧客のアクションにスコアを付ける「スコアリング」という機能があります。
このデータも、リードの状況を客観的に知るために役立ちます。
自社にとって最適なマーケティングDXの実践を
マーケティングDXの実践についてまとめます。
顧客体験構築のシナリオは、企業によって違う
マーケティングDXの具体例として、「引き上げウェビナー」と「隠れ検討層の獲得」という2つの施策を紹介しました。
マーケティングの現場では、このほかにも多くの施策が実践されています。
重要なことは、企業ごと、商品ごとに成果が上がるマーケティング施策は違うということです。自社独自の施策を実践して、効果測定をもとに改善を重ねることにより、マーケティングDXが確立されていくといえるでしょう。
マーケティングDXのために、MAでできること
マーケティングDXの実践には、MAが有効です。
本記事の前編・後編で今回ご紹介してきた以下のようなことが効率よく実践できます。
データの整備と一元管理
マーケティングDXでは、まずデータを整備する「データクレンジング」や、アナログな接点を含めたリードの履歴の一元管理が欠かせません。
MAにより短時間で正確にデータを整備・管理することができます。効率よくマーケティングDXの基盤が整備できるので、マーケターは施策・戦略づくりに注力できます。
マーケティング施策の自動化
マーケティング部門で課題となる「興味・関心層の引き上げ」のための各種の施策を自動化できます。
「引き上げウェビナー」はアナログ的な施策ですが、ウェビナーの集客や実施後のフォローなどを自動化できます。
「Webトラッキング」については、あらかじめMAで設定しておくことにより「隠れ検討層の獲得」のような目的に沿った成果が得られます。
詳細な効果測定とスピーディーな改善
マーケティング施策はPDCAやA/Bテストにより改善を重ねていきます。MAにより詳細な効果測定のデータを取得でき改善に役立ちます。
MA導入には一定のコストがかかりますが、活用することで集客数、商談数の増加が可能になります。
くわしくはこちらの資料でご確認くだ さい。
まとめ
本稿のポイントは以下の4点です。
1. マーケティングDXの基盤を整えた後、「顧客体験の構築」を実践します。顧客体験の構築とは、顧客を理解し、顧客が多様な体験を経て商談へいたるようOne to Oneの施策を構築することです。
2. 興味・関心層を比較・検討フェーズや商談へと引き上げるために、顧客の課題を明らかにする「引き上げウェビナー」が有効です。
3. 「Webトラッキング」により、しばらく休眠状態だったところから購買へ動き始める「隠れ検討層の獲得」が可能です。
4. 顧客体験の構築のための各種のマーケティング施策は、MAツールにより効率化・自動化ができます。
最後に、シャノンのマーケティングオートメーションでは、データの一元管理による効率的なリード獲得とナーチャリングが可能です。
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