ランディングやコマーシャル、マーケティングリサーチなど、トピックが多岐にわたる「グローバルマーケティング」。自社の売り上げに直結するようなグローバルマーケティングを行うには、何が必要なのでしょうか。
ITや製造業のBtoBグローバルマーケティングを支援している、マーケットワン・ジャパンのシニアディレクター大橋慶太さまにお話しいただきました。本社主導のグローバルマーケティングにおいて必要な要素と、求められる能力について解説しています。
※この記事は、「SHANON BtoB Marketing Conference 2019」で発表された内容を再編したものです。
「本社主導のグローバルマーケティング」の定義とは
私たちにとっての「本社主導」の定義。それは、プロジェクトの目的や現状、ゴールまでの道筋を、本社だけでなく各国の関係者が把握している状態。
そんな本社主導の「売り上げ直結型グローバルマーケティング」を行うにあたり、多岐にわたる要素が必要です。マーケティング戦略の立案や、データベースの構築、コンテンツ制作、CRM、マーケティングオートメーション、ソーシャルメディアマーケティング……。しかし、これらの要素をすべて一緒に進めようとすると、混乱を招きかねません。
そこで私たちは、ステージを1〜3に分けて、グローバルマーケティングを進めています。その3つのステージにおいて「誰が何をするのか」「どのような素養が求められているのか」をご紹介します。
ステージ1:全体設計
ステージ1は、自社単独で行うのが難しい全体設計。「いくらの投資が必要なのか」を見据え、達成可能なマーケティングゴールを導き出すのは、非常に難易度の高いものです。
そんな全体設計をクリアするためには、現状把握を目的とした「As-Is」調査の実施と、目標設定を目的とした「To-Be」の具体化が必要。特に、目標設定の「To-Be」を対費用効果も含めて具体化するのは、経験が浅いとなかなかできないでしょう。
目標設定については、国と地域によってKPIやターゲットが変わります。自社が市場の中でどのような段階におり、今後何をマーケティングに求めるべきか、も会社によって違います。
ステージ2:始動と展開
プロジェクト設計の承認がもらえたら、やっとプロジェクトがキックオフ。役割分担などをするステージ2に進みます。ステージ2では、幅広いステークホルダーの合意形成が必要です。なぜなら、B2Bの商材のばあい、実際に商材を販売しているのは営業部や販売パートナーで、マーケティング部だけでは完結しないから。
例えば、本国のマーケティング部隊・各国のマーケティング部隊・各国の営業部隊・販売パートナー・現地の支社長など、エグゼクティブも含めて合意形成しなければなりません。「エグゼクティブを含めなくてもよいのでは?」と思うかもしれませんが、のちにトラブルに繋がる恐れがあります。協力が得られなかったり、予算の承認が得られなかったり。
スムーズにプロジェクトを進めるためにも、現状と目標のロードマップをしっかりと作りましょう。目的やゴールまで設計し、エグゼクティブをスポンサーに回し、キックオフするのが望ましいといえます。
ステージ3:継続改善
ステージ3は、継続改善。好調なスタートを切れたとしても、グローバルマーケティングにおいてプラン通りに進むケースは、私が見てきた中ではありません。なぜなら、日本企業は営業部主導な場合が多く、マーケティングの知見を利用していることはまれだから。営業推進部はあっても、マーケティング部がないことも。
現地に合わせたマーケティング手法を取ろうとしているとき、マーケの知見が浅い営業部が主導で動くと、経験ゼロからスタートせざるを得ない状況を生み出してしまうのです。
ステージ1〜3で必要な力とは?
1〜3のステージで必要な素養は、それぞれ違います。では、ステージごとにどのような素養能力が求められているのでしょうか。
ステージ1で重要なのは、売上創出型のマーケティングを自分ごととして理解し、自社にとって最適なマーケティングの定義設計をする力。また、目標達成に向け、さまざまなステークホルダーを動かし、社内外を引っ張っていく力も大切です。
ステージ2で重要なのは、「グローカル」体制を構築するため、各国の市場や商習慣・規制に対する知識を本社側で持つこと。それにより、「どこまでローカルの人に任せるのか」「どこまでをグローバルで標準化するのか」のさじ加減を調整できるようになります。
ステージ3で重要なのは、マーケティングテクノロジー全般に関する、幅広い知識やノウハウ。Webやデジタルマーケティング、マーケティングオートメーションなどが挙げられるでしょう。
このように、必要とされる素養は多岐にわたりますが、すべてを押さえるのは難しいでしょう。ステージごとに必ずしも必要になるとは限らないため、外部にアウトソースしたり、海外のグループ会社に頼ったりなどで調達してはいかがでしょうか。
大手日系製造業によるチャレンジの実例
私たちのお客様、大手日系製造企業3社の実例をご紹介します。
1社目の事例。ステージ1の全体設計をして承認をもらう時点で、本社の経営陣には、各国のマーケティングリーダーのコミットを獲得できるリーダー人材がいませんでした。
そこで、マーケティングチームで一番声の大きかった、アメリカのマーケティングディレクターに目をつけたのです。マーケティングディレクターの権限と責任を、米国市場からグローバル全体へと拡大。本社に転籍し、プロジェクトを設計しメンバーを選んで推進する、プロジェクトリーダーになってほしいと打診しました。
彼をリーダーにアサインしたことで、一番声の大きかった人材の能力と知見をフル活用。上の承認を取りながら、プロジェクトの承認までスムーズにこぎつけ、グローバルでメンバーを引っ張っていきました。
2社目の事例。日本で成功していたマーケティングストラテジーのプランが、海外ではなかなか浸透しませんでした。そこで、日本企業のCMOが直接海外の主要国に行き、本社のストラテジーを説明。海外の協力を引き出しながら、ストラテジーを現地に適合させ、成功を収めました。
3社目の事例。ステージ3の継続改善時、グローバルのデジタルマーケティングの定着が、当初の予定よりかなり遅れていました。原因は、各国のリソース・コンテンツ量・スキルの違いです。
発生した問題に対し、これまでは現地の人をトレーニングしたり、必要コンテンツの作成サポートをしたり、といった対処をしていた同社。しかし、担当者を後方支援するだけでは、なかなかスピーディーに動けません。
そこで、アメリカやヨーロッパなどの自走可能なチームにはこれまでと同じスタンスを保ち、中国やインドネシアなどのサポートが必要なチームにはマーケ機能を外部パートナー会社に委託しました。
委託後、展示会を企画したり、Webサイトを作ったり、ホワイトペーパーを作ったり、他媒体からリードを買ったり。このように、委託先のマーケティング機能をフル活用することで、これまで以上の成長を成し遂げられました。
各国でリソース・スキル・コンテンツ量のバラつきがある企業は、珍しくありません。とはいえ、課題を解決するため、言語やマーケティングにおいて高スキルを持ち合わせた人材を確保するのもかなり難しい。
そこで、足りない部分をアウトソースすることで、地域ごとの目標をしっかりと達成していけるのです。
グローバルで売り上げを伸ばすことを目標にするなら、マーケティングは必須不可欠。困難にぶつかっても、ステージ1〜3を着実に進めていく意思を持ち、グローバルマーケティングに取り組んでいただけたら、と思います。
最後に、シャノンのマーケティングオートメーションでは、データの一元管理による効率的なリード獲得とナーチャリングが可能です。
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