第一想起とはたとえば、生命保険なら○○、チョコレートなら△△など、特定の商品カテゴリに対して真っ先に思い浮かべるブランド名や商品名のことです。
第一想起を獲得したブランドは、購入される確率が高く、ブランド価値をさらに高めることも可能で、事業の安定と成長に大きく貢献します。
本記事では、第一想起とは何か、なぜ重要なのかを解説し、ブランディングやNPSとの関連性、第一想起を獲得する方法にも言及していきます。
第一想起とは
第一想起とは、特定の商品カテゴリやニーズに対して、消費者が最初に思い浮かべるブランドや商品のことです。第一想起されるブランドは認知度がきわめて高いといえます。
第一想起率とは、調査対象の人のうち、第一想起されたブランドを思い浮かべた人の割合です。
第一想起の正式な英語訳は、「Top of Mind Awareness」です。「Top of Mind」「First Recall」や、「トップ・オブ・マインド」などと表現されるときもあります。
たとえば、「清涼飲料水といえば」という質問に対して、ある人が最初に思い出すブランドが「コカ・コーラ」であれば、それが第一想起です。
第一想起の対象となるブランドはすでに高い認知を得ているため、消費者が自ら探し、購入につながる可能性が高くなります。
したがって、多くの消費者からの第一想起を獲得することはマーケティング活動にとって重要です。
ただし、第一想起を維持するためには継続的なブランドコミュニケーションも重要です。
第一想起、純粋想起、助成想起とは?
ブランドや商品を思い出すパターンは第一想起のほか、純粋想起、助成想起があります。
第一想起
カテゴリやニーズを問われたとき、ヒントなしで真っ先に思い出す1つのブランド名が第一想起です。
純粋想起
カテゴリやニーズを問われたとき、ヒントなしで思い浮かべることができたすべてのブランド名です。
助成想起
カテゴリやニーズの問いに加えて、ブランド名のリストや商品についての情報などのヒントを提供したときに思い出せるブランド名のすべてを、助成想起といいます。ネット検索したときや店舗で商品をみたときにはそのブランド名が認識され、購入の選択肢に入る可能性が十分あります。
ブランドカテゴライゼーションと第一想起
ブランドカテゴライゼーションとは、消費者が商品を購入する際に、ブランドをどのように分類し、認識しているかを分析する手法です。ブランドの認知には段階があり、「第一想起」や「想起集合」など、消費者の記憶にどう残っているかによって分類されます。
ブランドカテゴライゼーションの段階
ブランド認知や購買に至るまでのプロセスでは、消費者の頭の中でいくつかのブランドが候補として分類されていきます。このような分類は「ブランド集合」と呼ばれ、以下のような段階に分かれます。
知名段階(Awareness Stage)
消費者が知っているブランド、知らないブランドを分類します。ブランド名をそもそも知らない「非知名集合」に分類されてしまった場合にはブランド力がまだ足りないといえます。次の段階からは、知名集合をさらに分類していきます。
処理段階(Processing Stage)
消費者がブランド名だけでなく、そのブランドの特徴やイメージなど、比較検討するときに参考になる何らかの情報を持っているブランドは「処理集合」、そうでないブランドは「非処理集合」に分類されます。
考慮段階(Consideration Stage)
次は購入するかどうかを考慮するステップです。消費者が購入を検討するブランドは「想起集合」に分類されます。検討はするが優先度が低いブランドは「保留集合」、購入しないと決めているものは「拒否集合」に分類されます。
選好段階(Preference Stage)
検討して購入するブランドを選ぶ段階です。検討対象となるブランドのなかで最初に想起するブランドが第一想起、その他は第二、第三想起・・・とされます。
想起集合と想起集合平均値
想起集合とは、「購入を検討するブランドの集合」です。
第一想起されるブランドはただ1つで、そのポジションを獲得することは簡単ではありません。しかし想起集合に入ることができれば、第一想起ではなくても購入の可能性が高まります。
したがって2番手以降ブランドは、第一想起獲得を目指すときにまずその前段階である「想起集合」に入ることを目指します。第一想起ほどではありませんが、想起集合に入ることができれば購入の確率は高くなります。
もっと認知度の低いブランドは、最初は名前を知られることを目指し、「地名集合」、「処理集合」・・・へカテゴライズされることを目指していきます。
想起集合平均値
特定のカテゴリについて想起する「想起集合」のブランド数の平均値が「想起集合平均値」です。
想起集合平均値が高い市場では、複数ブランドが検討対象に入るため、競争が激しくなります。一方で、想起集合平均値が低い場合は、第一想起ブランドの力が強く、その他のブランドが想起されにくいため、参入障壁が高くなる可能性があります。
第一想起の重要性
第一想起が重視される理由と、特に重視される場合とあまり気にしなくてよい場合があることについて解説します。
第一想起が重要とされる理由
第一想起が重要視される理由として、以下が挙げられます。
売上に直結する
第一想起を獲得したブランドは、当然購入される確率も高いです。知っているブランド=信頼できるブランドと位置付けている消費者も多く、比較検討をあまりせずに購入される確率が高まり、売上が向上します。
潜在顧客を先取りできる
第一想起を獲得すると、今すぐのニーズがないものの今後顧客になる可能性がある潜在顧客を先取りすることができます。たとえば、現在住宅を購入するニーズがない消費者にも住宅メーカーとして認知されていれば、住宅購入を検討する機会が訪れたとき、最も有力な選択肢となり得ます。
つまり、第一想起獲得により、顕在化していない潜在顧客の購買の可能性を高めることができます。
ブランディングの強化
ある商品カテゴリにおいて第一想起であり続けることで、ブランドの価値は高まります。それと同時に、消費者から見たブランドに対するロイヤリティも高くかつ持続的になります。
競争力を保持できる
第一想起を獲得したブランドは他のブランドより競争力があるため、価格を上げても顧客が離れにくく、離脱率が低くなりやすいです。収益をもとに新たな改善を行い、さらにブランド力・競争力を高める正のスパイラルが生まれます。
広告効果の向上
まず、第一想起であれば広告出稿の量が少なくても成果を上げることができます。広告が表示されたとき、ユーザーに認知されているブランドは目に留まりやすく、内容も伝わりやすいです。
そこから、すでに獲得した強みを活かして自由度の高い広告を展開することも可能です。「イメージ広告」、つまり商品説明は少なくストーリーやメッセージを強調したクリエイティブなどにより、ブランド価値をさらに高められます。
口コミなどでさらに知名度が向上する
「清涼飲料水といえばコカ・コーラ」のような第一想起ブランドは、広く認知されていることで話題にされやすく、SNSでの投稿も多くなります。口コミやSNSで広がることにより、カテゴリを代表するブランドとしての地位をさらに高めることができます。
第一想起獲得が重視される場合とそうでない場合
第一想起を獲得することは重要ですが、商品・市場によってはその重要度が低く、あまり気にしなくてよい場合もあります。
《第一想起獲得が重要》
競争が激しくいくつかのブランドが拮抗している
競争が激しい市場では、第一想起を獲得することがとても重要です。たとえば日本のビール市場ではアサヒ、キリンが拮抗していて、第一想起の獲得が重視されています。
高額で購入頻度が低い商品
上で挙げたビールの場合、消費者は第一想起を獲得したブランドだけを購入するわけでなく、第二想起、第三想起のビールも購入します。しかし、車、高級時計のような高額商品の場合、第一想起を得れば購入されるが第二想起の商品は少なくとも一定期間購入されません。高額商品では第一想起がより重要といえます。
新しい市場
今までなかった新商品の市場で早期に知名度を上げて第一想起を獲得すれば、その市場が拡大していくとき有利に事業を展開できます。「スマートフォン」「ストリーミングサービス」などの市場が拡大するより前に第一想起を獲得したブランドは、現在も高いシェアを保っています。
《第一想起獲得があまり重要でない》
低価格で購入頻度が高い食品や日用品
毎日消費する食品の場合、消費者は特定のブランドだけを購入するわけでなく、複数のブランドを同時購入します。食品や日用品のような低価格で購入頻度が高い商品の場合は、第一想起があまり重視されず、それよりコストパフォーマンス、品質、入手のしやすさなどが優先されることも多いです。生鮮食料品のようにそもそもブランディングされにくい商品もあります。
慎重に比較検討して選ぶ商品
消費者が複数の商品を慎重に比較検討して購入を決める商品でも第一想起があまり重要ではなく、商品の機能や価格、品質が重要です。たとえば、家電、住宅、塾、投資商品などがこれに該当します。
第一想起を獲得することがきわめて難しい市場
ある商品カテゴリにおいて不動の第一想起ブランドがある市場、あるいは、ブランド数が多く第一想起が特定されにくい市場では、第一想起獲得をねらうよりも商品の差別化、販売網強化など別の戦略が有効です。
ロイヤリティをより重視する場合
多くの人に想起されることよりも、少ないファンを大切にしてリピート需要や継続利用を促進していく戦略をとっていれば、第一想起の重要度は低くなります。宅配サービス、ホテルチェーンやBtoBビジネスの多くがあてはまります。
第一想起、NPS、市場シェアのちがい
ブランドの競争力や価値の資料となる用語として、第一想起のほかに「NPS」「市場シェア」があります。これら3つには正の相関関係がありますが、質的なちがいもあるので確認しておきましょう。
定義 | 特徴 | |
第一想起 | 消費者が最初に思い浮かべる商品・ブランド | 第一想起を獲得すると購入されやすく売上に直結 |
市場シェア | 市場の売上に占める割合 | 商品の競争力を示す指標 |
NPS | 顧客が他の人に商品を勧める可能性を数値化したロイヤリティの指標 | NPSが高いとLTV向上が期待できる ブランドへの愛着の指標 |
第一想起と市場シェア
第一想起と市場シェアには、強い正の相関関係があります。市場シェアが高いブランドが、同時に第一想起を獲得していることが多いです。ただし市場シェアが低くても第一想起を獲得している例もあります。高価格商品である「ロレックス」「ポルシェ」などです。
第一想起とNPS
NPSとは、顧客に対して「この商品を人に勧める可能性を10点満点で回答してください」という質問をして、0~10点で回答してもらい、数値化した指標です。顧客ロイヤリティの高さを示す指標として活用されています。
第一想起とNPSにも正の相関関係がありますが、第一想起と市場シェアの相関関係ほど強くありません。
第一想起は「最初に思い浮かべる」ブランドですが、愛着があるブランドとは限らず、第一想起ブランドとNPSが高いブランドは一致しないこともあります。
第一想起でなくてもロイヤリティを重視する戦略を成功させている企業があります。たとえば、「ほぼ日刊イトイ新聞」は独自の商品開発で高い収益を上げています。「バルミューダ」もロイヤリティ戦略の成功例といえます。
また、ユニクロやスターバックスは、ロイヤリティを重視する顧客志向の戦略を展開した結果事業が順調に拡大して、第一想起に近づいたブランドといえるでしょう。
以下の記事ではNPSについてくわしく解説しています。
参考:ロイヤルカスタマーとは?その定義と、MA連携でロイヤルカスタマーを増やす手法
第一想起を獲得する方法
第一想起を獲得する方法についてまとめます。
複数メディアによる露出強化
これから第一想起を獲得しようとするなら、広告戦略が重要です。デジタル、アナログ問わず多様なチャネルを活用して情報の露出を増やします。一気に知名度を上げたい場合には、Web広告のほかテレビ、新聞などのマスメディアに広告出稿したり、話題性のあるキャンペーンを実施したりします。費用がかからない施策としてはメルマガ配信、オウンドメディアなどがあり、これらも最大限活用します。各種の広告、メルマガ、では統一されたカラーやデザインを採用しましょう。
一貫性のあるメッセージを発信
商品やサービスを提供する企業の基本理念、ブランドストーリーなどを明確にして、それをベースにしたキャッチコピーを作成・配信します。ブランドイメージが確実に伝わるよう、Webサイト、広告、SNS投稿など各種のチャネルから一貫性のあるメッセージを繰り返し伝えることが大事です。
SEO
ユーザーが何らかの意図をもって検索したワードに対して上位表示されるためのSEOも大事です。検索結果に常に表示されていればクリックされる可能性が上がり、クリックされない場合も商品やサービス名の知名度が上がります。
参考:シャノンも実践中。BtoBマーケティングでSEOをどう進める?
SNSの活用
SNSからの発信は上で挙げた露出を増やす施策に含まれますが、それ以外に「インフルエンサーマーケティング」「SNSキャンペーン」なども合わせて行うことが有効です。特にBtoCビジネスではSNS施策が重要です。
参考:SNSマーケティングとは?5つの施策ポイントや成功事例、BtoBで有効な事例も紹介
商品の差別化
商品そのものの競争力を高めることも重要です。品質や機能に優れていてコストパフォーマンスがよいと顧客に認められれば、リピート需要、継続需要が増えるでしょう。商品やサービスが評価されればSNS上でユーザーが発信されることもあり、このようなUGCは第一想起獲得にも有効です。
参考:UGCとは?UGCを活用するマーケティングの重要性と手法、企業事例を解説
顧客体験の向上
顧客体験を向上する要素である接客、購買しやすさ、品揃えなどを強化することにより、顧客満足度を上げることも大切です。
シャノンが実践!シチュエーションごとに第一想起を獲得する具体例
最後に、シャノンが実践する第一想起獲得の施策例を紹介します。
シャノンの商品は「MA(マーケティングオートメーション)」です。清涼飲料水などと違い、MAのよさ、便利さなどは、ユーザーが具体的に思い浮かべることがしにくいサービスといえるでしょう。
魅力を伝えることが難しい商品であるMAで、どのように第一想起獲得を目指していけばいいでしょうか。
シャノンでは、シチュエーションごとに第一想起を獲得することを目指しています。シチュエーションとはMAを活用できるシーンのことです。具体的には、
・展示会のアフターフォロー
・休眠顧客の掘り起こし
・インサイドセールス立ち上げ
・マーケティングへのChatGPT活用
などが挙げられます。
施策例としてはたとえば以下があります。
展示会のキャッチコピーにメッセージを反映
「展示会アフターフォローならシャノンのMA」といったキャッチコピーを展示会ブースで大きく掲げ、シチュエーションにおいてシャノンが想起されることを目指します。
メルマガ、ウェビナーなどで繰り返し発信
「休眠顧客の掘り起こし」をテーマにしたコンテンツ作成、「休眠顧客を掘り起こして活用」するセミナー開催など、ひとつのテーマを複数の施策で定期的に取り上げます。
コラム記事を複数回配信
ChatGPTをマーケティングコンテンツ作成に活用する方法については、いろいろな角度から記事として取り上げて、コンテンツのボリュームを増やしています。
以上のような施策を今後も継続して、シチュエーションごとの第一想起獲得を目指していきます。
まとめ
本稿のポイントは以下です。
1. 第一想起とは、特定のカテゴリやニーズに対して、ユーザーが最初に思い浮かべるブランドや商品のことです。
2. 純粋想起とは、ヒント無しで思い浮かべることができたすべてのブランド名、助成想起とは、ヒントを提供したときに思い出せるブランド名のすべてです。
3. ブランドカテゴライゼーションとは、あるカテゴリ内のブランドを認知度によって位置付ける分類方法です。その最上位が第一想起です。第一想起を獲得しようとするとき、まず想起集合に入ることを目指します。
4. 第一想起が重要とされる理由として以下が挙げられます。
・売上に直結する
・潜在顧客を先取りできる
・ブランディングの強化
・競争力を保持できる
・広告効果の向上
・口コミなどでさらに知名度が向上する
ただし、第一想起があまり重要とされない市場や商品もあります。
5. 第一想起を獲得する方法として、以下があります。
・複数メディアによる露出強化
・一貫性のあるメッセージを発信
・SEO
・SNSの活用
・商品の差別化
・顧客体験の向上
最後に、シャノンのマーケティングオートメーションでは、データの一元管理による効率的なリード獲得とナーチャリングが可能です。
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